ジワジワ来る『この世界の片隅に』
ミーハーなので話題になっているこの映画、ちゃんと観てきた。
『君の名は。』はオッサンとしてはちょっと抵抗あったけど、こっちは戦争時代の話だし、絵柄もとっつきやすいし、客層も年齢高めだったので緊張感無く観に行けたw
でも…何だか感想がうまく言えない映画だった。
すごく感動したかというとそうでもなく、なんだろうこのジワジワ来る感じがうまく説明できない。ひとことで言うと、「わかりやすい感動が無い映画」だった。かな。
絵柄や雰囲気からも、きっとこの「すず」という主人公がどんなに悲惨な目にあっても前を向いてしっかり歩いて行く、という映画だと想像できたし、戦時中の広島が舞台ということで容易に原爆のことが織り込まれているとは思ったし、確かにそういう映画だったんだけど、思っていたようなエモーショナルな演出や感動は無く、そこが何だか肩透かしをくらったような変な気持ちになったところかも。
でもすごくジワジワ来る…。
あー、今ちょっと思い出したんだけどリンクレイター監督の『6才のボクが、大人になるまで。』を観終わった時に感じたようなジワジワ感に似てるかも。
とにかく主人公の「すず」が非常に愛らしくて心に残る。あの首を少しかしげて照れ笑いする顔とか、ほんとクスッと笑えるし愛らしい。
ちょっとぼーっとした性格で、やさしくて、何事も一生懸命で明るくて、ってアニメの主人公としてはわりとありそうなキャラだと思ってたんだけど、アニメでよく感じるわざとらしさがないというか、とても自然というか…。
のん(能年玲奈)の声もすっごく合っていて、怒った時の声とかスゲーって思った。
声優の良さとか、誰がやっているかとかあんまり気にしないほうなんだけど、この声は完全にキャラと一致していたし、これしかないって感じ。
素晴らしい仕事でした。
戦前から戦時中の人々の暮らしを忠実に再現しているとのことで、その時代にタイムスリップしたかのような気分になる(Youtubeで監督のインタビューとか聞いてみたらそれも納得…そのコダワリ具合におったまげますw)。
ちょっと話はズレるけど最近NHKの朝ドラをよく見てて、戦前〜戦時中〜戦後を描いたものが多く、今やってる「べっぴんさん」その前の「とと姉ちゃん」もそうなんだけど、何だかまったく現実感無いというか、描き方がすごく記号的な感じがしてて、少し前にやっていた「カーネーション」の時の凄みやリアリティがまったく感じられない。
この映画は、あのカーネーションで感じたリアリティと似ている、というかアニメなのにそれ以上のリアリティを感じた。
でもこの映画、思わず笑ってしまう部分もとても多く、一番悲惨な戦争時代(しかも原爆投下もある)設定なのに、なぜかほんわり温かい気持ちになる。でもそれだけじゃないやるせなさや悲しみも織り交ぜてくるので、わかりやすい感動とか、ほんわかした気持ち「だけに」させてくれないというか、とても複雑な気分を与えられるというか。
映画館は日曜ということもあって結構人は入っていたんだけど、終わってからもあまりガヤガヤしてなく、みんな自分と同じように何とも言えないこのジワジワ感を味わっていたように見えた。
『シン・ゴジラ』の時にも思ったんだけど、海外の人にもぜひ観てもらいたいなあと思った映画だった。
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↑ 原作はこうの史代さんのコミック。
ちらっと見た感じ、映画はこのマンガの絵柄にとても忠実だし、絵柄も最近のちょっと主張の強すぎるアニメと違って、オッサン世代でもホッとできるテイストで好き。
全然関係ないけどこれもジワジワ来る映画でオススメ。