今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

結構エグかった…『沈黙 ‐サイレンス‐ 』


映画『沈黙-サイレンス-』本予告


気乗りしなかったけど、話題作だし、スコセッシ監督だし…ということで観てきました。

一般公開日が金曜で、その翌々日の日曜日の15時くらいの回で観たんだけど、思ったより人が入ってねーってちょっとビックリした。
遠藤周作原作のキリシタン弾圧のお話ってだけで客層は限られるだろうし、若者が多い映画館っていうのもあったとは思うけどちょっと寂しいねぇ。地方だとこんなものかな。

 

気乗りしないのは遠藤周作の本ほぼ読んだこと無いというのもあるけど、「歴史に弱い」という情けない理由もあったりするw
でも、まあ日本人なら誰でもキリシタンのことは教科書で勉強するし、踏み絵くらいは誰でも知ってるよね。そんなレベルの自分でも特に困ることは無かった(と思ってます)。

余談ですが、最初の踏み絵のシーンで、後ろの方の席にいたアメリカ人の女性が思わず「Oh...No」って漏らしていましたね…。

 

 

結論から言うと、この映画や原作が持っているであろう重厚なテーマについては、正直よくわかんなかった…。そりゃまあ、言わんとしていることは何となく感じることもなくはないけど、自分に突き刺さることはなかったというか。

そんなスコセッシ監督が長年作りたかった思い入れのあるテーマ的な部分はいったん置いといてw、自分はこの映画、結構エンターテイメントととしてとても楽しめました。

上映時間162分もあるけど全然飽きない。あ、後半はちょっと飽きるかもだけど、そんな長い映画だったのかって観終わって気づいたくらい。

前半は未開の地(日本)に乗り込み、レジスタンスのような百姓さんたちとの出会いも面白いし、身を潜めながらの布教活動とかハラハラドキドキする。
つらい生活の心の支えとしてキリスト教ってのもよく伝わってきたし。

奉行所も極悪非道で、取り調べのシーンとかすごく緊張感高いし、処刑シーンもかなりエグい。特にあの火で焼くシーンとか…(エンターテイメントと言うのは憚れるけど…)。

教科書では、迫害とか踏み絵とか弾圧くらいのマイルドな言葉の表現だけだったけど、まあ実際こんなに非道なことが行われていたんだろうな、と映像でこんだけ見せられちゃうと、やっぱりインパクトがあるしハンパない恐怖を感じる。

イーライ・ロスの映画とかもっとキツい描写のもあるけど、やっぱり史実を元にしているだけによりリアルに感じてしまうのかも。

 

あと、日本人の役者とおそらく日本人スタッフがしっかり入り込んで作っているので、「ちゃんとした日本」の映画になっている。

だいたいハリウッド映画における日本の描写はアジアと言うか東洋でひとくくりな感じなので、どうしても興ざめしちゃうけど、この映画ではそういうことは一切ないと感じた(自分レベルだと)。

あ、でもロケ地はたぶん日本じゃないので、海岸線や山の中とかの風景はあんまり日本に見えない。サイパンとかそんな印象だったけど、霧が深い感じでうまくごまかしていてギリギリセーフな感じだったかな(実際のロケ地は台湾とのこと)。

何より日本の役者陣がすごく良かったなあ。
これはマーチン・スコセッシ監督の手腕なのか、役者陣やスタッフががんばったからなのかわかんないけど、わざとらしい海外向けの演技とか一切なくて、日本の役者がみんな良くて逆に日本人として誇らしく思った。

http://chinmoku.jp/images/cast-isseyogata.jpg

イッセー尾形とかホント最高の演技だなと思った。正直、リーアム・ニーソンよりもずっと良かったw

あと、主演のアンドリュー・ガーフィールドも悪くないけど、より特徴のある顔立ちの(馬面のw)アダム・ドライバーの方がいい感じだった。主演は逆にしても良かったのに。

http://chinmoku.jp/images/cast-adamgriver.jpg

いや、単純にアダム・ドライバーのくせになる顔つきがもっと見たかっただけなんだけども(カイロ・レンだとマスク被ってる時間長いしねw)
 

でもまあ、なんだかんだ言ってもやっぱりこの映画のテーマである宗教について嫌でも何か考えざるを得ない映画ではありました。窪塚洋介演じるキチジローを見てつくづく宗教は罪深い面があるなと思ったし。

以前、NHK歎異抄(たんにしょう)という仏教の本を紹介していた「100分de名著」という番組のことを書いたけど、まさにあの中で語られたことだなあと思い出した。

宗教には非常に差別性や暴力性が内包されていることもそうだし、ちゃんと段階を踏まずに都合の良い部分だけつまみ食いする大変なことになるよという部分は、まさにこの映画のキチジローのことだなと思ったし。

↓暇な人は読んでみてください。 

seymourgw.hatenablog.com

 

そういえば、この前に観た『アイ・イン・ザ・スカイ』もこの映画も「究極の選択」が題材で、かつエンターテイメントとしても面白いってとこが共通しているな…。
なかなかヘビーな映画が立て続けで、次はもうちょっとゆるくて笑える映画にしたいかも。

 

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 原作も時間があったら読んでみたいけど…。遠藤周作自信もカトリックでありながら矛盾を感じていたんでしょうかね。

沈黙

沈黙