今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

甘いルックだけど実は超面倒くさいやつ?ウェス・アンダーソン作品。

私、これまでウェスと言われたらクレイブンでしたがw、1ヶ月ほど前に『犬ヶ島』を観てからというもの、ウェスと言えばアンダーソンになってしまいました。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/0e/Wes_Anderson_at_the_2018_Berlin_Film_Festival.jpg

ウェス・アンダーソン - Wikipedia

犬ヶ島「スゲー良かった!最高!」と言うほどのテンションではないのですが、細部にいたるセンスの良さや独特の世界観が妙に頭に残っちゃいまして。

それに「シネマ一刀両断」でいつもやさしく解説してくれるふかづめさんから、ウェスなら『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』がイイっすよ、というお薦めももらったし、これは観るしかないかなと。

ただ「今度観てみますー」なんて調子よく返事してからすいぶん時間が経ってて、そろそろ「お前実は全然観る気ないだろ!」と突っ込まれるんじゃないかと日に日に不安が大きくなってきたのでw、「だったらいっそ過去作全部観てやろうじゃないか」と何をトチ狂ったのか、TSUTAYAやネット配信で探しまくり、短期集中で6本観ました。いやー疲れました(笑)

これまで観たウェス作品は『ファンタスティックMr.FOX』と『犬ヶ島』だけでしたが、今回『アンソニーのハッピー・モーテル』以外は全部観ました(監督作品のみ)。

疲れたついでに、せっかくだし駄文な感想でも書いてみることにしましたが、一応最初に言っときます。

ウェス監督の映画、感想書くの難しいですw。

でも「感想なら好きにギャンギャン書いとけばいい」って励ましの言葉ももらってるので、気にせずギャンギャンしてみます。

あと、もひとつ言っておくと、そんなに好きじゃないかもです(笑)。

強いて例えると、彼女にはしたくないけど仲間にいると面白い女友だち、くらいの温度感ですw。じっくり話すと面倒くさくて疲れるんだけど、たまに会うと個性的で面白く刺激もらえるタイプって感じ(まとめて観るべきじゃなかったかなあ…w)

ちなみに、ウェス作品を読み解く力(気力?)は自分は持ちあわせてないので、町山智浩さん、宇多丸さんの解説(YouTubeにあるやつ)も合わせて参考にしました。なるほど、すごく勉強になった!
それを見れば(聞けば)、ここから先は正直読む必要はありませんがw、まあそれ以外の自分なりに感じたことを書いときます。お暇ならどうぞ。

 

ウェス・アンダーソン作品。もちろん好きな部分があるからこそ気になってるんです。どこが、というとやっぱり「センスの良さ」ですかね。これは誰もが認めるところだと思います。抜群のセンスの良さ。

色使い、画面の動かしかた、音楽の入れ方、タイトルやスタッフロールの入れ方、フォント、その他もろもろ。ビジュアルやグラフィックセンスがほんとカッコいいし素晴らしい。「きれいな色、オシャレ、かわいい」部分が受けてるのは間違いないと思いますし、画面が心地よくてウットリします。どこでポーズかけても完璧に美しい画面。

あと、今更説明するまでも無いかもですが、「画面が左右対称」「横移動」「90度回転」「ミニチュア感」の面白さもありますよね。

このこだわりは一体どこから来てるんだろうか?左右対称と言えばキューブリックくらいしか思いつきませんでしたが、町山さんの解説で「PEANUTS(スヌーピー)」だとあって、めちゃくちゃ合点がいきました(ほかにも影響を受けただろう映画言ってたけど忘れたw)

www.youtube.com

なるほど、確かに似てる。色使い、ポップさ、何より横移動。『ムーンライズ・キングダム』なんて世界観もまんま。スヌーピーも出てくるしw

俳優たちも、泣いたり笑ったり叫んだり、身振り手振りの過剰な演技はせずに、表情すらあまり変わらないところもカートゥーンっぽいし、そもそもビル・マーレイを一番好んで使ってるのもそういうことではないのかなとw。

ちょっと話はそれますが、最近のよくできたアニメって、キャラの表情がすごく豊かに描かれてますが(ジブリ細田守アニメの子供だとか、ピクサーのキャラとか)、あれってちょっと苦手なんですよね。表情を押し付けられている感じというか。
昔のマンガやアニメってそこまで表情がないけど(時間や予算の関係なのでしょうけど)、でも見る側の想像力で補完しているじゃないですか。
ウェス監督も同じようにあえて俳優さんに演技を抑えさせて、逆に観客の想像力を利用しているのでは?とちょっと思ったりしました。全然違うかもですがw

 

ミニチュア感ももちろん好き。町山さんも言ってましが「サンダーバード」ですよね。Mr.FOXや犬ヶ島のようなミニチュアアニメは当然ですが、実写映画でもわざわざミニチュアを使って表現してたりするこだわりよう。
ライフ・アクアティック』では8時だよ全員集合のセットのような船の断面セットまんま作ってます。たぶん子供の頃、アリの巣観察やプラモデルのジオラマ作りとか好きだったんじゃないのかなー。
ウェス監督の映画を観ていると、子供の頃にワクワクした気持ちが蘇ってくる楽しさがあります。理屈とかではなく感覚的に。

ふかづめさんが「おもちゃ箱」という表現を使ってましたが、まさに監督の頭の中のおもちゃ箱を映画で見せてもらっている感覚です。
そこを楽しめるのであれば、ウェス映画はどれも好きになれるかもしれません。

ただし!

その甘いルックに騙されそうになるけど、ウェスさんと最後まで付き合うのは非常に面倒くさくて疲れますw。1本観終わったあとに連続して観ようという気がまったく起きないくらい、とにかくどの映画も疲れます。

面倒くさくて疲れる理由は3つあって、「情報量が多い」「盛り上がる展開があんまり無い」「鬱々と悩んでる人が多い」です。たぶん。

老若男女、みんな鬱々と悩んでます。観ててこっちもだんだん辛くなってきます。『ライフ・アクアティック』は途中で観るのやめようかなと思ったくらいだし、『ダージリン急行』でも「この自分探し三兄弟は一体何がしたいんだ!」とイライラしっぱなしw

でも我慢して最後まで付き合うと、何だか知らないけどじんわり良いものを観たな、という気持ちが残るから不思議です。
それは大体が親子の関係だったり、友情であったり、誰もが共感するような人間関係をテーマにして描いているからなんだと思います。面倒くさくてケンカばかりしてるけど、でも心からは嫌いにはなれない身近な人って誰にでもいますよね。

ただ、そこに行き着くまでは、やっぱり面倒くさい。きれいな画面だけじゃ持たないです。

 

そろそろ長文書くのにも疲れてきたので、観た映画はひとこと感想で済ませます。すみませんw
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天才マックスの世界

結構オススメです。あまり途中辛くないですw
主人公マックスを演じるジェイソン・シュワルツマンがとにかく暑苦しくてクドいけど憎めない。特徴的で忘れられない顔つきは、お母さんがタリア・シャイアと聞いて納得!ウェス・アンダーソン映画の原点なんだろうと思われる演劇の舞台装置のこだわりようが最高です。

 

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

ジーン・ハックマンが史上最高にダンディでカッコ良い映画。こんなオシャレで勝手気ままな男になりたい。対象的に子どもたちは大変な傷やトラウマを持って鬱々と生きていてギャップが凄い。

 

ライフ・アクアティック

これは中盤までは結構キツかった。けど後半からはだんだんと盛り上がって、最後はちょっと感動しました。ストップモーションアニメが素晴らしい。

 

ダージリン急行

個人的には一番合わない映画だった。三兄弟とお母さんの関係性が自分の共感ポイントではなかったのかも。ストーリーがほとんど無いとこも辛かった。
おまけのショートムービーでナタリー・ポートマンのお尻が拝めるのは高ポイントw

  

ムーンライズ・キングダム

可愛らしく、わかりやすく、楽しい。主人公が子供たちなので一番入りやすい映画ではないかと思う。

 

グランド・ブダペスト・ホテル

これまでの映画とは違い冒険活劇になってるので入りやすい映画かも。アメリカで大ヒットしたのもわかるけど、結構エゲツないシーンもある。この作品と次の『犬ヶ島』はこれまでになかった政治的なメッセージが入ってて、監督の傾向が変わってきているように感じた。

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町山さんらの解説を聞いていると、とにかく自分の好きなものを映画に詰め込んでいる監督というのがわかりました(ゴダールトリュフォーオーソン・ウェルズの映画などにも影響を受けてるそうなのですが、正直その辺の映画に疎いのでほとんどわかりませんでしたがw)。

 
で、そんな解説を聞いていて、ふと思ったのは、小学生の頃に好きなマンガをよく模写してた思い出です。
なぜ模写するのかというと、やったことある人ならわかると思うんですが、模写することで対象のマンガが自分のものになる感覚を味わえるんです。

マンガの単行本を買ったり、イラストを額縁に入れて飾っても、決して自分のものになった感はなく、結局満たされません。
でも、一生懸命似せようと模写してうまく描けるようになると、そのマンガ(キャラ)が自分のものになった感覚を味わえるんです。

たぶん、ウェス・アンダーソン監督も、映画の中に好きなものを詰め込むことで、自分のものしたかったんじゃないかなと、そんな気がしました。

それは、タランティーノスピルバーグなど、他の監督もみんなそうなんでしょう。でもただの真似で終わらずに、新しい何かに生まれ変わらせることができるところが凡人との違いなんでしょうけどね。

その差はもしかすると「どれだけその対象が好きなのか」という熱量の差なのかなと思います。

ウェス・アンダーソン監督は、その熱量が他の追随を許さないくらい半端ないのでしょう。そして、それに付き合うにはやっぱり相当面倒くさいんでしょうねw

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