今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

ジム・ジャームッシュの呪縛から少し解けた/パターソン

呪縛というのは大げさですね。勝手に自分で自分を縛ってただけなんですけどねw

ジム・ジャームッシュ監督といえば、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』。あと『ダウン・バイ・ロー』。そのタイトル名や監督名を聞くと、今でも少し凍りつきます。


ストレンジャー・ザン・パラダイス 日本版劇場用予告篇

公開当時、ちょうど思春期で意気がっていたアホな若者のひとりであった私は、当然飛びつきました。だって「カッコいい」映画だったから。まあ、ファッションとか流行りとかそんな感じです。
信じられないことに、当時、都会の一部の人たちだけがこの映画を囃し立ててたわけじゃなく、地方のド田舎でもこぞって「カッコいい」と評判になったんです。少なくても私の周りでは。こんなわかりにくい映画がですよw
熱狂的にハマるやつもいて、当然ファッションやスタイルを真似るヤツまで現れました。監督のジム・ジャームッシュもパンクスみたいな風貌でカッコよかったですしねジェームズ・コバーンに似てるとも思いましたがw)

そして、当時オシャレで最先端なこの映画が「わからない」とはとても言えない空気が蔓延してました。当然自分もよくわかってないくせに「カッコいい」を連発してました。今思うと凄く恥ずかしい、あの頃の黒歴史をどうしても思い出してしまうんです。

今の時代、映画観るのにこんなバカみたいな見栄はもう無いと思うし、何それ?って思うかもしれませんが、あの頃はそういう空気が割とあったんです。いや私の周りだけだったのかもしれませんが(笑)

ジム・ジャームッシュはあれから定期的にずーっと映画を作ってますが、永瀬正敏工藤夕貴(割と好きだった)が出演した『ミステリー・トレイン』を最後に、ずっと監督の映画は観てません。黒歴史を思い出したくなかったから。
こんな過去の恥ずかしい思い出をブログに書けるようになったのは、成長したんでしょうかね、自分w

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去年、『パターソン』がネットでも高評価だったので気になってました。
でもやっぱりちょっと抵抗があって少し避け気味だったんですが、DVDレンタルもされ時間もだいぶ経ったし、こそっと借りてみました。

ストーリーらしいストーリは無く、パターソンに住むパターソンさんの月曜から日曜までの一週間を淡々と見せていくという映画。まあ、相変わらずわかりやすいエンタメ映画ではないですし、淡々とした眠くなる映画なのは変わらないなあという印象ですが、やっぱり映像がカッコよくてオシャレでした。

オシャレというのはちょっと違うか。計算されたアートのような画面で、ウェス・アンダーソンと同じようなこだわりがひしひしと感じられますよね。

昔との一番の違いは、とんがった雰囲気がまるで無くなってたとこ。ジム・ジャームッシュ監督もトシ取って丸くなったんでしょうか。もうひとつ意外だったのは、クスっと笑えてほんわかした気持ちになれる映画だったこと。もう、昔の作品の内容はほとんど憶えてないですが、こんな笑い要素あったっけ?

それにしてもアダム・ドライバーがほんといい味出してますよね。
こういう人に私はなりたい。
流行を追い、なんでも中途半端にかじっては捨て、奥さんとはしょっちゅうケンカする自分からすると、こんな人に憧れすらあります。毎日を淡々と好きな詩を書いて満足する。仙人みたいな人。

どちらかというと奥さん?恋人?のローラのちょっと痛い感じを自分に重ね合わせていたたまれなくなったりしましたw
ローラは毎日部屋の模様替えや壁のペイントをしてて、しかも草間彌生のようなパターン好きとくるもんだから、最初、ローラは心に傷を追って社会に出られなくなった悲しい人なのかと思ったくらいでした。

そんなローラを本当にやさしく包み込むパターソンですが、後半ある大ショックな出来事に見舞われます。この映画で一番大きな出来事かも(でもクスッと笑えるんですが)。
そんな中にあっても、やっぱり彼は人やモノに当たり散らすこともなく、感情的になることもなく、また希望を見いだします。仙人か。
私の中にこんなアメリカ人は存在しませんw 感情を出し、ぶつけ合い、それで相手を知り尊重するというのがアメリカ流だと思ってたので。
まるで日本人のようなストイックさだなあと思ったのですが、ここで永瀬正敏の登場です。いやー、ミステリートレインを思い出してちょっとグッと来ましたよ。
そういえばジム・ジャームッシュ小津安二郎東京物語が好きだったり、パターソンも日本的な感覚を取り入れているのかもしれませんね。

 

少しだけ、ジム・ジャームッシュの呪縛から解けそうなので、過去作も(気力があったら)観てみようかと思いました。観てよかったパターソン。

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余談 
ストレンジャー・ザン・パラダイスで知ったスクリーミン・ジェイ・ホーキンス。
もうお亡くなりになってしまいましたが、横浜の小さなクラブで生ライブを観に行った事があります。棺おけ芸に大爆笑しましたが、高齢なのにメチャパワフルでカッコよかったです。劇中に使われている「I Put Spell on You」はたくさんのアーティストがカバーしてますよね。
Constipation Blues(便秘ブルース)なんてとんでもない曲もありますw 最後まで聞くと爆笑できますので興味ある方は探してみて下さい。

Best of

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 こんな芸風の人です。もしかしたらこの人に呪われてたのかもw

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