今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

タクシー運転手 約束は海を越えて

まるでインド映画のような凄くサービス精神に溢れた欲ばりな映画でした。

映画の面白い要素がこれでもかとふんだんに詰め込まれていて、それでいて最後まで飽きさせずに楽しませてくれます。たぶん観た人の多くが「得した!」と思うのではないでしょうか。

 

ただ、問題はこのポスターとタイトル名からは、まったくそれが想像できないってとこですw

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タクシー運転手 約束は海を越えて : 作品情報 - 映画.com


原題は『A Taxi Driver』なのですが、それはデ・ニーロの映画だろう!と。さすがにそのままではスコセッシに怒られるw しかも『TAXI』も『ドライバー』もすでに使われている。
配給会社の人も色々考えたあげく、「シンプルに日本語の『タクシー運転手』でいいじゃん!」となったのでしょうが(勝手に決めつけてすみませんw)、でもやっぱりパッとしませんよね…(ごめんなさいw)

感動的な内容を伝えるためにサブタイトル『約束は海を越えて』も入れてみたけど、悲しいかな、このソン・ガンホの写真の前では焼け石に水。どうやってもコメディ映画にしか見えないですw

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ふらっと映画館に来て軽い気持ちで「なんかこのオッサン楽しそうだし、よくわかんないけど観てみるか」とチケットを購入したあなた。ラッキーでしたね。まさかこんな欲ばりなエンタテイメントが味わえるなんて。

過剰な誇大な表現に騙されてイラッとするのが映画ポスターや予告編の世界。そのまったく逆パターンなので、観た人はみんな「得した!」と思うわけですw

 

で、その映画の内容なのですが、最初はポスター通りのコメディで始まります。ポスターは嘘ではない。

 冴えないけど人情派のタクシーの運転手(ソン・ガンホ)が、騙されたり怒られたり、娘に悲しい思いをさせたり。でも明るく楽しくたくましく生きてて、まるで昭和の寅さん映画のような雰囲気で始まります。

でも、ソウル市内の各地で起きている学生デモをうまく織り込んで、不穏な時代背景もちゃんと見せていきます。

自分も当時は韓国の政治事情なんてあまり知らなかったし(チョン・ドファンの名前くらいは知ってた程度)、まさか韓国が軍事独裁政権下にあって反体制運動真っ盛りなんて全然知らなかったわけですが、その時代の実際にあった事件を元にした映画です。

そういえば同じ時代を描いた韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』の劇中でも学生と機動隊の街中での激突が描かれてましたよね。だいぶお笑い寄りな見せ方でしたが。
サニーのWikipediaにはこんな説明がありました。わかりやすい。

1980年代の韓国
ナミが高校時代を過ごす1980年台後半の韓国は、全斗煥大統領時代の第五共和制であり、1988年のソウルオリンピック開催を控え、国内の経済成長を果たした一方で、民主化を求める学生運動やデモが絶えない時代でもあった。全斗煥大統領はそうした政治体制への批判をかわすために、映画や音楽などの娯楽に寛大な姿勢をとり、外国映画の流通やカラーテレビ放送などを解禁したと言われている(3S政策)。そういった当時の政治情勢や文化状況が映画内でも反映されている。

そんなソウルから遠く離れた光州市では、デモをしている民衆の鎮圧のため軍隊まで出動させ内戦状態になっていたにもかかわらず、政府側は周囲を完全に封鎖し、情報を遮断して隠蔽。それを東京にいたドイツ人記者が韓国から潜入して事実をフィルムに収め世界に発信した、という実際の事件を元に作られたのが本作というわけです。

現代のようなインターネット時代では考えられませんよね。完全に隠蔽しようと思えば力づくでもやれる状態というのは恐い。

 

最初はまるで寅さんのような出だしで始まりますが、このあたりから急にスパイ映画になります(ほんとw)。でもスパイじゃなくてジャーナリスト。演じるのはトムではなくトーマス・クレッチマン。渋カッコいい男臭い役で色んな映画に出てますが、この映画ではちょっと、いやだいぶオッサン入ってます。イケメン好きなクレッチマンのファンにはちょっと残念かも(ね、seicolinさんw)。

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トーマス・クレッチマン - 映画.com

 

でまあ、ひょんなことからソン・ガンホとクレッチマンが一緒にタクシー乗って光州市に向かうわけですが、不穏な空気を徐々に醸し出しつつもまだコメディは続きます。

ソン・ガンホは面倒なことに巻き込まれたくないので、お金ももらってさっさとソウルに帰りたいんだけど、トラブル続きでなかなか帰れない。そうこうしてるうちに地元の人たちとの交流が始まり、徐々に人情映画になってきます。緊張した状況にあっても決して笑いや思いやりを忘れない市井の人たち(これが後々効いてきます)。

ここで出てくるのがユ・ヘジン。ちょっと前にも『コンフィデンシャル 共助』で韓国のダメ刑事役だったんだけど、すんごい昭和的な雰囲気というか一度見ると忘れられない顔ですよね(これが後々効いてきます。ほんとw)。

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ちょっと間抜けでアホな学生や、ユ・ヘジンの奥さん役(焼肉ドラゴンに出てた)も良い味出してます。

 

で、その夜。ある衝突現場に行ったことから、映画はガラッと変わります。

ここからはサスペンス、アクション、カーチェイス、と息をもつかせないほどの緊張感と、そして悲劇が展開されます。もう最初の寅さんとはまったく別の映画になってます。このあたりは詳しく書きませんが、もう観てください。

知ってしまったらもう後戻りはできない!覚悟を決めてやるしかない!

そんな映画でした。

まあ事実を元にしたお話ですからね。最後は「約束は海を越えて」になるわけです。

 

それにしてもこんだけの要素を詰め込んでるので、上映時間は2時間超えの137分!さすがにちょっと長くない?とは思いましたが、インド映画と思えばしょうがないw

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余談

この映画の真の主役とも言える韓国のタクシー。これがまた色といい形といいかわいくて最高でした。おしゃれなグリーン。

ググってみたらどうやらマツダと提携してたKIAというメーカーの車みたいで、ファミリアをベースにしてるようです。
まだ小学1年生くらいの時のウチの車がまさにこの車によく似たファミリアだったんですよね。それもあってか凄く親近感がありました。
思うんですが、70年代のクルマのデザインそのままでテクノロジーは今のクルマにして売ってくれないかなーといつも思います。
このクルマこのままで売ってたら絶対ウケると思うけどなー。

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メディアは11月発売。

タクシー運転手 約束は海を越えて [Blu-ray]

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ユ・ヘジンの顔に魅了された方はぜひw 面白いですよ。 

 

クレッチマンが大好きなseicolinさんブログ。勝手に貼ってすみません。
ちなみに自分、クレッチマンと同じ誕生日なんです。ただそれだけなんですがw

seicolin.hatenablog.com


モヒカンのほうも一応。

タクシードライバー (字幕版)