『華氏119』/『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』
げ、もう12月入っちゃったよ。
華氏119
もう上映終わってるかもですが、これはできるだけたくさんの人に観て欲しいなと思いました。
『華氏119』なんてさっぱり意味がわからないタイトルではおそらく誰も観ないので、こんな等身大カンバンがでーんと置かれてて、楽しげに並んで写真撮ってる若い人もいました。
幸か不幸かトランプはメディアに出まくりのキャッチーなキャラクターなので、日本でも知名度は高いけど、右の人だれー?って声が聞こえてきそうw
自分が観た時は10組もいないくらい閑散としてて、しかも年齢層高めの人がほとんど。まー、そりゃ若い人からしたら自国の政治にもうんざりしているのに、よくわかんないアメリカの政治事情なんてさらに興味ないですよね。きっと。
映画はトランプが大統領選に勝利したところから始まりますが、いつものムーア監督作のように苦笑いのオンパレード。
ヒラリー・クリントンの支持者たちの悲哀の表情たるや。笑っちゃいけないんだろうけど、でもやっぱり可笑しいので苦笑いw
最悪なのは、トランプが娘のイヴァンカを溺愛?するあまりの愛情表現やスキンシップの映像が出てきて、いやーそれが気持ちわりーのなんのって、だんだん笑いも消えてきます。
トランプ対ムーアという映画ではない
てっきりムーア監督がトランプを徹底的に攻撃する映画なのかと思ってましたが、意外なことにアメリカの各地で起こっている問題をメインに、アメリカ自体の問題を痛烈に批判していました。
(あまり知らなかったということもあり)一番強烈だったのはムーア監督の出身地でもあるミシガン州フリント市で起きている恐ろしい出来事。
州知事に当選したリック・スナイダーが、なんと水道を民営化しコストダウンのために敷いたパイプから汚水や鉛が出て市民に健康被害が出てるのに、まったく問題ナシとして放置しているという。
なんとこの知事、元パソコンメーカーGATEWAY社の会長というのにビックリ!あの牛の模様をデザインしたGATEWAYですよ(おっさん世代なら知ってるはず?)。
市民は貧困層の黒人が多く、嫌なら町を出て行けと言わんばかり。合法的な民族浄化では?という展開に唖然…。
もちろんこのスナイダー州知事はトランプから支持を得ているので市民は絶望しているのだが、そこに元大統領のオバマが来てなんとかしてくれるという展開に市民は沸き立つ。しかしそのオバマもパフォーマンスだけで結局何もしてくれず。
それだけならまだしも、街の郊外で軍事演習まで行われるというとんでもない状態に…。
今まさに日本でも水道民営化が可決され、自衛隊や米軍基地のある地域でも市民に被害は出ているにも関わらず強行されている現状にまったく重なってて、もう冒頭の苦笑いも完全に消えてます。
フリント市でのオバマ批判だけでなく、民主党自体にも痛烈な批判をかましています。
ヒラリーが支持されなかったのは、同じ民主党候補のバーニー・サンダースのほうが人気があったのを、民主党自体が出来レースでヒラリーを候補に立てたから支持者がうんざりして投票にいかなかったためトランプに負けたのだと。
結局、今の状況を作った原因はアメリカ国民や現政治体制にあったということですよね。トランプばかり批判してても問題解決にはならないと。
新しい希望も
だけど、ちょっとした希望の光も見せてくれます。
それは日本でも話題になった、アメリカの高校生たちのデモ(March for Our Lives)。
度重なる学校内での銃乱射事件に「もう殺されるのはまっぴらごめんだ!」と立ち上がった高校生たちだけの力で起こした一大ムーブメント。
また、バーニー・サンダースの意志を継ぐ新しい政治家候補たち。
中でも、貧困層や有色人種や若者からの支持を集めているアレクサンドリア・オカシオコルテスさんのような党の政治資金に頼らない候補者たちも紹介されてました。
※オカシオコルテスさんは先の中間選挙でも28歳の最年少にも関わらずベテラン議員に勝つという番狂わせで当選を果たしていました。
他にも自分たちで街を守ろうという草の根運動も紹介していました。
映画としても飽きない
場面があっちいったりこっちいったり戻ってきたり、情報量も多いので集中しないとなかなか大変ではあるけど、でも難しいとか退屈ってことはないです。
いつものマイケル・ムーア映画の楽しさ(ショッキングさ)はふんだんにある。
ただひとつだけ気になったのは、マイケル・ムーア老けたなあ…と。
今回も給水車に汚染水を入れて、知事宅にぶちまけるといういつものマイケル・ムーアパフォーマンスがあって笑ったが、そろそろ寄る年波には勝てないかもという雰囲気。
ふと、マイケル・ムーアの後継者を彼自身がそろそろ見つけて託してもいいのではないかと思ったけど、こんな人の代わりって、そうそういないよね。
みんなで映画観て大事にしていきましょうw
ボーダーライン ソルジャーズ・デイ
www.youtube.com
これは良かったですよ!
しっかり楽しむには、やっぱり前作の『ボーダーライン』を観てほしいですが、前作とは完全に切り離されたお話になっているので、今作だけ観ても全然問題は無いと思います。
ただ、主役のふたりのキャラクターがとても魅力的なので、結局前作も観たくなるかもです。
あらすじ
アメリカ国内で自爆テロ事件が発生(このシーンがもういきなり強烈!)。
どうやらメキシコからの違法入国ルートが絡んでいるらしいので、メキシコ麻薬カルテルに詳しいジョシュ・ブローリンに「どんな手を使っても構わないからなんとかせい!」と政府から秘密裏に任務の依頼が下りてくる。
ジョシュ・ブローリンは、さっそく相棒である殺し屋(Sicario)のベニチオ・デル・トロと共に、麻薬カルテル同士を敵対させるため、カルテルのボスの娘を誘拐し、自作自演を謀るが、事態はとんでもない方向に転がっていく。
前作同様の緊迫感!
あらすじでも書いてるけど、冒頭からしていきなり自爆テロシーンが強烈!
しかしなぜISIS系のテロ事件?メキシコ麻薬戦争では?と思うんだけど、そこはあくまでも導入シーン。
メキシコ麻薬カルテルの恐ろしさは今回も健在。
警察内部にもカルテルの息のかかったものがたくさんいるため、メキシコの警官は全く信用できない。自衛できるのは自分たちだけとばかりに、中東での軍隊そのままの装備で護送するシーンは前回同様、ほんとドキドキする。
ブオォォーン…という不気味な地鳴りのような低音の音楽もあいかわらず緊迫感に拍車をかけています。
戦闘シーンの面白さ
しかし、そんな事でビビるジョシュ・ブローリンやベニチオ・デル・トロではない。
怪しいと思ったら躊躇なく発砲するし、軍隊時代に鍛えられた胆力が凄くて、まったく弱腰になる気配なし。
カルテルも恐ろしいけど、ほんとに怖いのはアンタたちだよ!ってところはブレていないです。
とにかく、前作と比較してもまったくパワーダウンしてないどころか、彼らの戦闘力の高さが相変わらず強烈で面白い(不謹慎かもですがそういう映画なのでしょうがない)。
予告編にもある、ベネチオ・デル・トロの変な銃の連射シーンは、「いよっ!待ってました!Sicario(暗殺者)」と言いたくなるほどカッコいい(不謹慎かもですがそういう映画なのでしょうがない)。
メキシコ麻薬戦争は、実際に起っていることだし、悲惨な現実はありますが、しかしエンタテイメントとして消費しているのは事実だし、この映画もそういう作りになっていると思います。
人間味を追加
前作でジョシュ・ブローリンとベニチオ・デル・トロは徹底して非情で狂気に満ちた男たちとして描かれていて、人間らしさというか苦悩する役は麻薬捜査官のエミリー・ブラントに与えられていました。
しかし今作は、そんな非情な彼らにもハートフルな一面があるという作りになってます。おそらくここが好きか嫌いかで評価が分かれるポイントではないかと思います。
あんまりその辺を書いちゃうとネタバレになるからこの辺でw
設定もちょっと無理が生じているところがあって、前作よりも「おいおい、それは無いだろう」という部分が多く、少し気になりました。
テイラー・シェリダン脚本にハズレ無し?
監督はすべて違う人なのに、テイラー・シェリダン脚本の映画はどれも一定の面白さが保証されている。
『最後の追跡』はまだ観てないけど、『ボーダーライン』『ウインド・リバー(監督も兼任)』そして今作とどれも無類に面白い。
中でも『ウインド・リバー』が一番社会派という印象。エンタテイメント性はボーダーラインシリーズのほうが強いと感じました。
次もこの路線で行くのか、それともまったく別のテーマに挑戦するのか。いずれにせよ次回作が楽しみです。
ムーアもシェリダンも、どっちもアメリカの社会問題をテーマにした映画としてオススメです!
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ムーア監督作で自分が観たのはこのあたり。どれも面白かったなー。
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