パッドマン 5億人の女性を救った男
いやー、ヤバいですよ!この映画。
本当に面白かったし、めちゃくちゃ震えました。
パッドマン 5億人の女性を救った男 : 作品情報 - 映画.com
はたして女性の生理現象をテーマにした映画なんてかつてありましたかね?
比喩的な扱いとしてはもちろんあると思いますが、思いっきりストレートにそのものを扱った映画は無いですよね?(あるかもしれませんが私は知らない)。
男性にとっては妊娠出産と同じく、まったく実感できないものだし、表面的な知識はあっても、深く知る事も無いし話題にすらしませんよね。普通は。
しかし、その女性の生理の悩みや問題に真正面から取り組んだ男がインドにいました。
それが、この映画の主人公パッドマン(ラクシュミ)こと、実在の人物であるアルナーチャラム・ムルガナンダムさんです。
これは実話であり(脚色はしていると冒頭で説明は入りますが)、今なお現在進行形で続いている物語なのです。
ほんとおぉぉぉぉに、すごい話です!
実話だしポスターや予告見てわかるように、生理用品をインドで普及させ多くの女性を救った男、という事実があるのでネタバレも何もありませんが、まっさらで観たい人はとっとと映画館に行って下さい。
ま、いつもの駄文なのでそんな気にしなくてもいいかもですがw
あらすじ
時代は2001年。
もう世の中にはインターネットが台頭し始めている頃なのに、主人公ラクシュミの住んでいる村はとても貧しく、生理用品はとても高価なため、女性たちは不潔な布で処理をしており、それゆえ感染や病気のリスクも背負っています。
さらに「生理は不浄で穢れたもの」という古い価値観をいまだ持っており、女性はその期間中は家の中ではなく檻のような外のベランダで寝させられ、料理すらできないという古い慣習を何の疑問もなく受け入れて生きています。
ラクシュミは愛する妻をそんな状態から救いたい一心で生理用品の開発を始めますが、周囲の理解をまったく得られず孤立し、ついには村を追い出されてしまいます。
しかし、彼は諦めるどころか、ますます生理用品の開発に取り憑かれてしまい、ついに安価で誰でも手に入れられる商品開発に成功します。
ミラクルな実話を題材にした映画はたくさんあるし、この映画もまあ信じられないようなお話なのですが、でもその事実の面白さだけで感動してるわけじゃあないんです。
映画として良く出来ている
映画の出来不出来を語れるほどの知識はありませんが、でも自分の知識レベルでも十分に感心するくらいよく出来ている映画だなーと感じました。
上映時間としては少し長いんです。137分。
前半、主人公のラクシュミが村を去るところでインターミッション(休憩時間)の文字が入るので、もしかしたらこれでも海外向けにカットしたのかもしれません。
ですが、ですが、この映画まったく飽きること無く、それどころかワクワクが止まらず、最後のほうはジェットコースタームービーのような盛り上がりになるんです。
無駄がないんです。たぶん。
冒頭から長い歌で始まるのですが、ちゃんと主人公が妻を得た喜びをしっかり見せているし、主人公がどんな人物なのか、何を大事にして生きているのか、しっかり刷り込まれるので、その後の展開がちゃんと納得できるようになってます。
細かいところも丁寧に作っていて、たとえば、主人公はいつもシャツの裾を出していて、妻はいつも出勤前にズボンに入れて送り出すというシーンがあるのですが、それはあとあとの展開に効いてくるばかりか、最後は原点に立ち返ったようなシーンにもなってます。
主人公の友だちに借りたちょっとしたお金のやり取りとか、細かいとこもあとでしっかり回収してじんわりさせたり、とか。
あと、今大ヒット中の『ボヘミアン・ラプソディ』のようなライブシーンもあります!
うそですw ライブではなく演説シーンです。
ずっと、主人公の悩み、苦しみ、不安、絶望を描いてきたあとのクライマックスとなるこの演説シーンで感動がブワーッと押し寄せてくるとこなんて、まさに『ボヘミアン・ラプソディ』みたいだなと思いました。主人公はフレディ・マーキューリーと同じくらい、いやそれ以上にカッコいいかもしれません。
ああ、ここで映画は終わるんだな、と思いましたが、 しかしそこはインド映画 w ここからまだもうひとつびっくりするような楽しさ(というか切なさ)を用意してくれてます!大人ならではの感情の揺さぶりがあります。もうどんだけ泣かせにかかるんだよ!と。しかもちゃんと粋な演出を入れてくるんですよ。
『ダンガル きっと、つよくなる』でもそうでしたが、ベタと言えばベタなんです。でもこんだけ揺さぶられると抵抗できませんw
役者さんたちもまた良いんですよね。奥さんのガヤトリ役の人も、協力者のパリー役の人も美しいし、ヒゲモジャの友人も最高です。
主人公の行動が大事なことを示唆している
最初に書いたように、単なる事実に基づいたサクセスストーリーというだけでは無く、この主人公の行動にたくさんの大事なことが含まれているように感じました。
同じように「変人」であり、ぶれない心で成功した代表格であるスティーブ・ジョブズの人生も破格に面白いお話だったりしますが、自分とはまったく違う世界に感じるし、まったく真似できないストイックさに感じます。それゆえのヒーロー性や憧れも感じるのですが。
もちろんこのパッドマンの決してあきらめない行動、成し遂げた功績は到底真似できないものです。
ただ、「誰でもが持ち得ている大事なものを、あなたは見てないだけなんじゃないの?」という強烈なメッセージをパッドマンは主張してくるんです。
妻への愛、好奇心、人のためになることの尊さ、生きがい、前を向くポジティブさ、慣習を打ち破る気持ち、仕事に取り組む真面目さ、などなど。たくさんの大事な示唆に富んでいます。
そんな中でも、自分が一番大事なのは「ユーモア」なんじゃないかと思いました。しんみりしたシーンはほとんどありません。この映画自体もコメディですし。
ラクシュミの住んでいる村はとても貧しいですが、とても美しく撮られていますし、住んでいる人たちの生活も、とても豊かな暮らしのように映されています(実際はそうではないかもしれませんが)。
ラクシュミが成功し、パッドマンとしてニューヨークの国連で演説するとき、バックには大都会の喧騒が映し出されていて、とても対象的に使われているのも面白かったです。
ラクシュミが村に持ち帰りたかったのは、大都会の富ではなく、古い慣習に縛られた人々(彼らは無知ゆえにほんとに怖ろしい)に、知識がもたらす自由と公平さだったのだと思います。
皆さん年末の忙しい最中で、映画どころじゃないとは思いますが、ぜひぜひ観に行って欲しい映画です。
と、忙しさを理由にブログをさぼってばかりいる私からのオススメでしたw
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そういえば、私の大好きな『マダム・イン・ニューヨーク』もこの映画に似てますね。
女性の自立を描いていますし、最後は感動的な演説(スピーチ)で泣かせてくれますし、どちらもインド英語がキーポイント(と思ったら、この映画の監督は、パッドマンの監督の奥さんらしい)。
おまけ
本物のパッドマンのTED。