今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

40〜50代オッサン必見『シング・ストリート 未来へのうた』

ネットでの評判も良さげだし、何より80年代のダブリンが舞台のロック(ポップス)バンドのお話、とくれば当時UKロックに熱中していた40〜50代のオッサン世代はどうやっても期待するし、絶対観に行くべき映画でしょう(自分のことねw)

すごく心待ちにしていた映画だし、ちゃんと楽しめたんだけど、ただ…ちょっと期待しすぎだったかな。
自分のような映画の修行が足りない人のいちばんの大敵は「期待」!
期待値で映画の感想が大きくブレるんですよ。(例として『アイアムアヒーロー』『シン・ゴジラ』はホントまったく期待してなかったので(笑)たぶん三割増しでくらいで面白いと感じたはず。期待しすぎてガッカリパターンは数知れず…)

だから普段から気になる映画の情報はなるべく入れないようにしているのだけど、どうしても今回のような映画は特に期待や妄想が勝手に膨らんでしまうという…(笑)


つまらなかったわけではもちろん無く「青春・ロックバンド・仲間・ボーイミーツガール」というキーワードにビビッと来た人は絶対観に行くべき映画だと思うし、面白さは保証できます(たぶん)
それを前提に、自分が期待した部分とのズレについて感じたことを含めて、感想は以下で。ネタバレ含むので映画に興味ある方はスルーしてください〜。


「シング・ストリート 未来へのうた」予告編

 複雑な家庭事情、(日本で言うとこの)ヤンキーだらけの男子高校への強制的な転校、口うるさい校長、執拗なイジメ、という四面楚歌の主人公が、仲間を見つけ、イカした(死語?w)女の子と出会い、バンドを結成し、自分の道を切り開いていく、というある意味王道なストーリー。

前半はコミカルな演出満載でとてもテンポ進むので、観客は少なかったけどおばちゃんたちも結構笑って楽しんでた。
時代がMTV全盛期なので、演奏しないデュラン・デュランの映像に理解できない両親に対し主人公のお兄ちゃんがいかにこれがイケてるのかを解説(力説)するとことか笑ったし、主人公もバンド=プロモーションビデオを撮影するものという前提なのもおかしかった。(当時はホントMTVって流行ってみんなこぞって作ってたけど、今見返してみるとかなり寒いというか笑える映像が多いよねw)

http://133.242.151.193/pmstudio/images/Sing-Street2.jpg

主人公がバンドのメンバーをひとりずつ探していくくだりは、いかにもな展開だとわかっていてもワクワクするし楽しい。この手の青春映画の醍醐味って感じ。

当時、アメリカやイギリス(アイルランドだけど)の高校生は日本人より100倍くらい進んでいてオシャレでカッコイイ生活をしていると思っていたけど、この映画の高校生は裕福とはいえないアパートに住んでるし、普通にカーチャンが話に割り込んでくるし、学生服がメインだし、女の子との出会いもないし、家の中は息苦しいし、当時の自分たちと全然変わらない。
自分たちと同じように、映画の中のアメリカ人に憧れて、女の子にモテたい一心で一生懸命カッコつけたり背伸びする。
そこが共感ポイントだし、昔の自分たちにダブって見えるし泣けるのである。

なんだけども、この映画の違和感というか自分の感覚とズレていたのは、まず主人公があまりロック好きに見えないこと(むしろ熱く語るお兄ちゃんのほうがずっとロック好き)。
またイカした女の子にすぐにアタックする動機もよくわからないし、あっさり成功するのもありえない。
ナンパの手口としてとっさに(お兄ちゃんの受け売りで)バンドを持ち出すのは笑っちゃったけど、その後トントン拍子で楽器やメンバーが揃い、曲もすぐにカッコイイのが完成し、しかもみんないきなり演奏がうまいし(妄想も少し入っているっぽいが)、女の子もすんなり認めて参加してくれる。
なんだかちょっとズルいというか共感できないw(映画なのでこれくらいじゃないと話が進まないんだろうけど)

そして一番の不満なのはバンドのメンバーの扱いがおざなりな部分。
バンドは「仲間感」がキモだと思ってたし、個性豊かなメンバーたちとのドタバタや対立、そして最後に結束して何かをやり遂げる…みたいのを想像してたし、それこそ泣けるポイントだと思ってたんだけど(ブロマンス映画好きだしw)、後半は主人公と女の子の関係、家族のヘビーな現実や兄弟との絆がメインになっている。

たぶんそこが消化不に繋がっているんだと思う。

ボーイミーツガールも、家族の絆も嫌いじゃないし、感動ポイントなのはわかるけど、自分が期待したのはそこじゃないというか。

バンドメンバーが、それぞれ個性豊かでいい感じだったので余計にそう感じたのかも。
特に良かったのが、なんでも演奏ができて楽器もすべてそろっているあいつ!あいつが特に最高w(↓右の彼)

http://gaga.ne.jp/singstreet/img/04-screenshot.jpg

楽器はなんでも演奏できるし、曲は作れるし、演奏している姿もカッコイイし、見た目もちょっとジョン・レノンぽくもある。

主人公の要求に何ひとつ嫌な顔せず協力してくれるし、何より音楽愛が感じられてほんと良いキャラだった。

マネージャー役のあいつもずっと主人公を助けてきたし、他のメンバーも文句も言わずバンドに参加してくれたのに、最後は彼らバンドメンバーは完全に置き去りにされていて、なんだか主人公の引き立て役のような、添え物のようなそんな扱いなのが納得いかなかったのかも。

粗暴なイジメっ子を仲間にする展開は、ちょっと「おおっ!」っと思ったけど、結局ヤツもあまり活躍しなかったし、最後まで扱いがよくわかんなかった。

彼らバンドメンバーとの別れのシーンくらい作って欲しかった。
下手すると、主人公が彼女をゲットにするためにバンドを利用しただけのようにしか見えないのでは?と、超斜めからの穿った見方も出来なくもない気がするし。

ま、単に監督の意図したとこと、自分の期待した部分がズレてたというだけで、映画は素直にちゃんと面白いと思いますけども。

 

主人公たちの作るオリジナル曲もすごく良く出来ているし、何より当時のヒット曲もたくさん流れるので、オッサン泣かせの映画であることは間違いなし。
ところで今の高校生にこの映画を見せたらどういう風に見えるんでしょうね?w ちょっと興味ある。

 

あと、最後にきっとたくさんの人が思ったことだろうけど、1985年のダブリンが舞台なのに、なぜU2は出てこないの?と思った人は多いはず。権利関係の問題なのか、U2がまだ現役バンドだからなのか。

個人的にはダブリンと言えばブームタウン・ラッツかな(さらにオッサン世代w)。

 

余談だけど自分の中の最高のバンドものは(映画じゃなくマンガだけど)、江口寿史の『GO AHEAD!!』(懐かしくて当時のコミックもヤフオクで手に入れたw)
ギャグ漫画だけど甘酸っぱくて切ない、仲間感にあふれた傑作です。

Go ahead!! (ジャンプスーパーコミックス)

Go ahead!! (ジャンプスーパーコミックス)

 


↓当時のヒット曲だけじゃなく、オリジナル曲もとてもすばらしい。 

シング・ストリート 未来へのうた

シング・ストリート 未来へのうた

 

 

ダブリンといえばこれ。ボブ・ゲルドフ

哀愁のマンデイ

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