観た映画:マンチェスター・バイ・ザ・シー
これはスゴイ映画。
アカデミー賞絡みで言うと、個人的には『ラ・ラ・ランド』よりも『ムーンライト』よりもこの作品のほうがグッと来たかも。
似たようなストーリーの映画ってたぶんこれまでもあったと思うんだけど、この映画が別格に思えるのは(もちろん脚本や演出が素晴らしいというのもあるんでしょうけど)何と言ってもアカデミー賞主演男優賞を獲得した主人公リーを演じるケイシー・アフレックの演技によるところが大きいのではと思う。
陰鬱な表情でワケあり人生を送っている寡黙な男に何があったのかのか?本来はどんな人間だったのか?をオーバーアクトせず淡々と見事にみせてくれる。彼の心がじわじわと見ている側に侵食してくるようなそんな感じ。
とはいえ、リーが経験した想像を絶する苦しみや辛さは、平々凡々と生きている自分には到底実感できるはずもなく頭の中で想像するしか無いのだけど、でもある程度生きてきた人なら誰でも多かれ少なかれ何かしらの辛い体験はあるだろうし、だんだん自分のことのように重ねて見てしまう。
元妻であるランディ(ミシェル・ウィリアムズ)との再会、その後の二人きりの会話シーンはホントすごい。心が張り裂けそうなほど複雑でどうしようもない感情が湧いてくる。
でも、つらい境遇同士の若い甥っ子との何気ないやり取りや心のふれあいが、うっすらとリーに何かを与え、そして彼なりの答えを導き出し、最後はかすかな希望を感じさせられる。
人生の酸いも甘いも体験してきた人ほど、この映画の良さをもっと感じ取れるのかもしれない。残念ながら自分はホントのほほーんと山も谷もない(自分なりにはもちろんあるけど)、平凡な人生を選んできた人なので、どっか他人事のような感情も少し湧いてきたりもしたけども…。
ケイシー・アフレックだけでなく、甥っ子パトリック役のルーカス・ヘッジスの演技も素晴らしいし、『ブルー・バレンタイン』でも厳しい人生を送っていたミッシェル・ウィリアムズはもうこの手の役専門女優?って感じ 。
リーの兄さん役、70年代顔(何それw)のカイル・チャンドラーも出番は少ないけど渋い演技で泣かせる。彼の優しさもジーンとくる。ちなみに役名もチャンドラーw
自分もそれなりにトシなので、父のこととか家族の関係についてとか、決してうまくいってるわけではないし色々考えるところがあるので、何だかこの手の家族の映画を見ちゃうと違う意味で辛辣な気持ちになる…。
でも面白かった。
まあ、とても心にズッシリ残る名作ではないでしょうか。
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