観た映画:羊の木
吉田大八監督の新作ということで観てきました。
吉田大八監督の映画は『霧島、部活やめるってよ』と『紙の月』の2本しか観てないんだけど、どちらも面白かったし、特に霧島部活のほうは、何度も何度もビデオで見返しているくらい好きな映画。
今回もさすがという感じでとっても緻密に作られたよく出来た映画でした。
設定が面白くて、過疎化の進む町で受刑者を仮釈放させ受け入れる(住まわせる)ことで、町の活性化につなげよう、という国家プロジェクトがあり、6人の受刑者を実際に受け入れることになったのだが、彼らは全員元殺人犯でした、というお話。
最初は、はぁ?そんな国家プロジェクトありえんだろう、なんて思ったんだけど、そこは原作がマンガだし、そういうリアリティのお話だと思えばまあ許せたし、何よりそのクセのある6人が次々紹介されるのが楽しくて、そこでグっと映画に惹きつけられてしまった。
「ここはいいところですよ。人もいいし魚もうまいし」的な、どーでもいい会話が、こんなに面白いなんて!
そんな笑いを交えつつも、元殺人者たちのフツーじゃない行動や、何かが起こりそうで起こらない不気味な感じがあって、下手なサスペンス映画よりも緊張感が最後までずーっと続くので、途中で飽きるということはほとんど無かったかも。
最後のほうは、黒沢清監督の映画っぽい雰囲気だなーと思ったんだけど、あとで調べたら黒沢映画のスタッフが関わっていたようでなるほど納得!
『スリー・ビルボード』観た翌日くらいに観たんだけど、この映画も同じように、こういうお話なんだろうな、とか、この人はこういう役割なんだろうな、という観る人の予想をうまくミスリードさせてひっくり返したりする。
『霧島、部活やめるってよ』でもそうだったけど、観てる人の気持ちを揺さぶってくるというか、問いかけられてるというか、そんな気持ちにさせられる。
あなたの周囲にいる人のバックグラウンド、ほんとに知ってますか?
実際に殺人犯の前科者だと知ったらあなたは態度を変えますか?
人を見た目で判断してませんか?
みたいな。
あと、吉田監督は役者さんの使い方がホントにうまいなあと思う。
自分は松田龍平さんがあんまり好きではないんだけど、この映画ではホントにハマリ役というか、もうこの人しかいない!って感じになってた。
メインの7名はもちろん、チョイ役の人も含めてみんなすごくイイ感じ!
個人的には、水澤紳吾さん(床屋)と安藤玉恵さん(クリーニング屋)が良かったなー。
観終わった後に、役者さんについてアレコレ話すことが楽しい映画でもあるのがイイですね。
そんなに親切な作りの映画ではないと思うけど、吉田監督のテイストが好きな人はもちろん、どんな人が観てもそれなりに楽しめるんじゃないかなと思いました。
オススメです。
ただ、「羊の木」ってタイトルと、冒頭に出てくる詩については、自分はさっぱりわかりませんでしたw
「紙の月」もそういえば意味不明なタイトルだったなあ…w
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原作マンガは読んだこと無いけど、山上たつひこといがらしみきおの豪華コンビ。
面白コワイ映画。90年代風ファッションとか時代設定が良く出来てます。
言わずと知れた大傑作!