今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

観た映画:ワンダーストラック

https://ia.media-imdb.com/images/M/MV5BMjM3NjY0MTYwM15BMl5BanBnXkFtZTgwMDI5NzA2MzI@._V1_SY1000_CR0,0,674,1000_AL_.jpg
http://www.imdb.com/title/tt5208216/

「キャロル」で何とも言えない美しい映像と切ない恋愛を描いたトッド・ヘインズ監督の新作。

トッド・ヘインズ監督が特段好きというわけでも無く(映画もキャロルしか観てないし)、予告編も見ず、ストーリーすらも読まず、何となく面白そうだなあという直感で観たのですが、これがまた大当たり。すごく良い映画でした。
今年観た映画では上位には食い込みそうな気がします(時間が経つとそうでもなくなることもありますけどw)

と、自分にはとてもフィットしたんですが、実は好みの分かれる映画なのかもしれません。映画サイトでの評価では厳し目の意見やピンとこないってレビューも結構目立ちました。

この映画は途中でどういう展開になるかはなんとなく見えるし、ミステリアスなお話ではあるけど驚くようなオチが肝になっているという映画ではないのですが、これから観ようと思っている方は、以下ご注意を(この説明自体ネタバレ?w)

www.youtube.com

あらすじはこんな感じ。

1977年、ミネソタ。母親を交通事故で亡くした少年ベンは、母の遺品の中から、会ったことのない実父に関する手がかりを見つける。その50年前、1927年のニュージャージー。厳格な父に育てられる聴覚障害の孤独な少女ローズは、憧れの女優リリアン・メイヒューの記事を集めたスクラップブックを大切にしていた。ある日、ベンは父を捜しに、ローズは憧れの女優に会いに、それぞれニューヨークへ向かう。2人の物語は、やがて不思議な縁で結びつき……。

ワンダーストラック : 作品情報 - 映画.com

 

http://wonderstruck-movie.jp/assets/img/cast/nav0.jpg1977年の少年ベン

http://wonderstruck-movie.jp/assets/img/cast/nav1.jpg1927年の少女ローズ

このふたりのストーリーが交互に描かれ進んで行きます。

ローズは聴覚障害の女の子(なんとローズ役のミリセント・シモンズさんは本当に聴覚障害者なんだとか!)、ベンは両親を亡くした男の子で、さらに不幸にも雷にうたれて耳が聞こえなくなってしまいます。

 

まずビックリするというか面白いのが、この映画、まるでサイレント映画のように途中からセリフがほとんど無くなります。

当然それはふたりが「聞こえない」演出というか表現なのですが、特に1927年のローズのパートは、ハッキリと意図的にそうしてて、映像と音楽と効果音ですべてを説明してくれるんです。これがもう楽しいというか、驚きというか、うっとりと言うか、まさに映画的な面白さに満ちてるんです。

 

対する1977年のパート。
これは自分の大好きな70年代を完全再現!ってだけでもう最高!満点ですw
これまでも70年代を再現した映画はいっぱいありますが、この映画がもしかしたら一番こだわっているかもしれないです。それくらいこだわりをビンビンに感じました。

だって、広い空間でクルマや人もわんさか登場するのに、隅から隅まで70年代なんです。そこに出てくるエキストラの人も、みんな70年代に生きてる人に見えるし、特に黒人のファッションとか細かいとこまで凄くこだわってます。
つい最近、大好きなブルースブラザーズを家で久々に観たんだけど、あの雰囲気がちゃんと出てて、連続して観ても全然違和感ないかも(言い過ぎかなw)。

 以前、こんな駄文も書いてますのでおひまなら読んでみて下さい。

 
そういえば「キャロル」も50年代だか60年代だかわかんないけど、当時の映像再現にこだわりまくってたし、まだ観てませんが「エデンより彼方に」もそういう映画らしい。

トッド・ヘインズ監督は古い映画を徹底的に再現するのが特徴なんですね。

あと、音楽も良かった!
デヴィッド・ボウイの曲をメインに、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でも使われていたFOX ON THE RUNとか、あとファンクでソウルな曲もいっぱい。2001年宇宙の旅もあったり、まあ楽しいしニンマリしてしまいます。
ボブ・ディランデヴィッド・ボウイの映画も過去に作ってるし、監督は音楽にも相当なこだわりがありそうです。

 

まあでも、この映画に一番グッときたのは、やっぱりこのふたつの物語が呼応するようにだんだん絡んでいくところ 。
孤独でどん底な主人公たちは、自分の信念に対してストレートに追い求めた結果、失ったものが復活します。不幸やハンデは決して人生において無駄なものでは無いし、あなたの人生もこの映画の主人公たちと同じように、すべてが繋がってて素晴らしいものなんですよ、っていう風に感じられたところですかね。

なんとなく、自分の好きな「ヒアアフター」や「メッセージ」を観終わった時のような感覚が味わえて、ずっと心に残りそうな映画になったかもしれません。

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 トッド・ヘインズ監督の映画

キャロル(字幕版)