今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

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バトル・オブ・ザ・セクシーズ : 作品情報 - 映画.com

 

7月に公開された映画ですが、やっと地元の映画館でも公開してくれました。これ、観たかったんですよ。

この映画の画像が最初に公開された時、ノーメイクのちょいダサいエマ・ストーンに目が釘付け。「おおお!エマ・ストーンそうくるか」と、興味津々でした。

今では押しも押されぬオスカー女優のエマ・ストーンですが、『スーパーバッド 童貞ウォーズ』や『ゾンビランド』の頃から好きなんです。大好きなゴールディ・ホーンにも通じるファニーな顔立ちがいいんですよねー(デレ〜w)。

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以下、実話が元になってるのでネタバレとかあるのか?とは思いますが、ちょっと細かく内容を書いてますので観てない方はご注意を。

 

ビリー・ジーン・キング夫人

今回エマ・ストーンは、ビリー・ジーン・キング夫人という60〜70年代に活躍した実在の女子テニスプレイヤーを演じています。

自分がリアルタイムに覚えている女子テニスプレイヤーはシュテフィ・グラフマルチナ・ナブラチロワクリス・エバートあたりまでで、キング夫人はたぶんそれよりもうひと世代前のプレイヤーなので、実際のテニスの試合などはさっぱり記憶にありませんが、それでも「キング夫人」の名前と風貌は鮮明に記憶に残ってます。

強そうな名前も手伝ってか、とにかく「男勝り」というイメージが強く残っていて、たぶん当時のテレビでもそういうイメージでさんざん流していたんでしょうね。端的にいうと和田アキ子みたいな人。

さすがにエマちゃんは手足が細くて、あの強そうなガタイまでは再現できてませんが、それでも雰囲気がよく似ててビックリしました。

ちなみにマイケル・ジャクソンの「ビリー・ジーン」はキング夫人とはまったく関係ないそうですw

 

男女の戦い

バトル・オブ・ザ・セクシーズというタイトルは、うっかりするとセクシー対決みたいだけどw(バカですみません)、「性別の戦い」という意味だそうです。つまり「男女の戦い」。

この映画は実話を元にしています。というか実際にあった試合を再現しています。

ボビー・リッグス(スティーヴ・カレル)という一線からは退いた元チャンピオンのおっさんプレイヤーが、キング夫人に「男と女、どっちが強いか勝負だ!」と、まるで「プロレスとボクシングどっちが強い?」と戦ったアリ対猪木戦のような、当時本当にあった無茶振りマッチを再現した映画です。今で言うと大坂なおみと松岡修造が戦うようなもんかも?w

 

 映画の冒頭で、当時の女子テニスプレイヤーたちがいかに不当な扱いをされてきたか、男性優位の社会だったか、がバッチリ描かれます。

キング夫人のほうが圧倒的に正しく論理的に主張しますが、紳士風なテニス協会のオッサンの口からは、現代の我々からは想像もつかないようなハラスメント発言がポンポン当たり前のように飛び出します。憤ったキング夫人と仲間たちは反旗を翻し、女子テニス協会を設立 します。

さてここから男女の戦いはどうエスカレートしていくのか?と思いきや、なぜかキング夫人とリッグス、それぞれの人間ドラマが展開されていきます。

 

キング夫人は理解ある素晴らしい夫がいながらも、美容師の女の子に惹かれてしまい、一線を越えてしまいます。世間ではレズビアンなんてまだ市民権を得られてないし、当然有名人である自分にはリスクでしか無く。しかもその関係を夫に感づかれてしまい、動揺し、試合にも勝てなくなってきます。このままこの関係を続けるのか?恋愛感情を断ち切るべきか、悩みます。

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バトル・オブ・ザ・セクシーズ : 作品情報 - 映画.com

方やリッグスは、かつてのチャンピオンという栄光があり豪邸を持ちながらも、ギャンブル依存症のダメおやじで、奥さんから三行半を突きつけられます。でも本当は奥さんも子供のことも好きで一緒に暮らしたいのです。

ギャンブル依存症で何が悪い?負けるギャンブルをしてるからダメなんだよ。俺は勝つギャンブルしかしない!」なんて支離滅裂な屁理屈で自分を正当化しようとしますが、家にも帰れない寂しい負け犬のような現状はどうしようもなく。

で、閃いたのが、キング夫人たちが勢いをつけてきた女子テニスと勝負すること。「男と女どっちが強いかマッチは絶対ウケる!一発逆転だ!」と、人生のギャンブルに出ます。徹底的に女性への侮蔑を口にし煽りまくり、とうとう試合の約束を取り付けます。

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バトル・オブ・ザ・セクシーズ : 作品情報 - 映画.com

 

常識との戦い

キング夫人は「私は男と対等だと言ってるわけではない。なぜ女性を敬って扱わないのだ?」と女性の権利、開放を叫びます(当時はウーマンリブと言い日本でも中ピ連とかありました)。

ギャラの格差をなくすため女子テニス協会も立ち上げたし、リッグスの仕掛けたこの馬鹿げた男女マッチにも挑んでいる、それは女性開放のため!というような流れになってますが、実はこの映画、社会の常識との戦いがテーマなのではないかと思いました。

 

キング夫人の本当の辛さは、どうしても否定できない自分の中のレズビアンとしての感情だし、リッグスも表面は女性差別的なことを徹底的にやってるけど、明らかにそれはショーであり茶番でしかなく、実は彼は妻が求める「良い父親」になれない破滅的な自分と戦っているわけです。たぶん。

ふたりともテニスプレイヤーとしての功績を除けば、(当時としては)世間的にはアウトな人なんじゃないかと思います。

よりはっきりわかるのが、キング夫人の衣装デザイナーであるテッド(アラン・カミング)が、最後にキング夫人にささやく言葉です(感動したのであえて書きません。ぜひ映画を観て下さい〜)。彼もまたキング夫人と同じく世間と戦っている人でした。

 

安易にMeTooムーブメントに乗っかってる感じでもなく、お約束的な女性差別の描き方をしてるわけでもなく、誰しもが持つ葛藤と、それを打ち破るための挑戦(もがき)を描いているように感じました。そこが誰しもに共感できる映画になっているんじゃないかなーと思いました。

 

とはいえ、実際にキング夫人の果たした女性の立場向上の功績は素晴らしいものだし、現在の女子テニスの隆盛は彼女の勇気あってのものだと思います。

折しも、セリーナ・ウィリアムズを破って日本人初のメジャー大会を制した大坂なおみ選手が話題になっている最中なので、今こそこの映画を観るべきじゃないかなと思います〜!

 実際のお二人。

 

余談

70年代を再現した美術も素晴らしかった!衣装から小物まで結構なこだわりようでした。キング夫人の履いているブルー・スウェードアディダスは復刻してくれたら買いたいくらい(レディスだっつーのw)。

 冒頭のFOXサーチライトのロゴからすでに70年代風になっていて、本編も昔の映画のようなざらつき感があって、フィルム撮影なんだろうなと思ってググってみたらKODAKの35ミリフィルムとビンテージレンズで撮影しているとのことでした。
KODAKメールマガジン|VOL.111|

 

そして間髪入れずに今度はマッケンローとボルグの映画が公開!

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http://gaga.ne.jp/borg-mcenroe/

これも楽しみですね。そんなにテニスに興味はありませんがw

 

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 エマ・ストーンの映画おすすめ三連発。どれも面白いです。

ゾンビランド (字幕版)

ゾンビランド (字幕版)