バッド・ジーニアス 危険な天才たち
バッド・ジーニアス 危険な天才たち : 作品情報 - 映画.com
読者登録してるKnoriさんとこで映画の感想を書くことについての悩みについて書かれていて、ちょっぴり共感しました。
自分も心(脳)に受けた「モヤモヤ」を書いたり伝えたりしたくなります。すごく表面的なものですがw
いつも色んな人の映画評、レビュー、感想を読んで刺激をもらったり、自信をなくしたり、嫉妬したりで、なかなか自分が書くとなると勇気が要ります(砂漠の砂粒のひとつとは言え、一応全世界の前に並べているわけですから)。
自分は毎回勢いとノリと直感で根拠のない自信を絞り出して書いてます。テンプレートやメソッドはありません。
小心者なので、バカと悟られないよう、できるだけ難しいことは書かないというガードも忘れてませんがバレてます。
そんな直感ノリ重視のバカな私が、ジーニアスについての感想を書かせて頂きますw
(ネタバレも最後のほう書いてます)
ジーニアス。憧れますよねぇ。
人は自分に無いものを持っている人に憧れる、なんてよく言いますよね。自分はまったくそのタイプで、特に知的な人に割と無条件に憧れます。バカだけに。
知的とひとことで言っても色んな解釈があるわけですが、単に勉強ができる=試験の点数が高いってだけでも、それはそれで尊敬の眼差しです(さらに性格が控えめな人だとノックダウンされます。女性だと確実に惚れます)。
この映画は、裕福ではないけど小さいときからオールAの天才的な女の子リンが主人公。
もうね、このリンちゃんの面構えがすっごくいいんですよ。一見素朴で清楚かと思いきや、何やら隠し持った不敵さや強さが顔ににじみ出てて。
しかも、9頭身?という超モデル体型(実際モデルさんだそう)で凛々しい迫力まで備わってます。ちなみ名前はチュティモン・ジョンジャルーンスックジン。絶対覚えられませんわw
リンちゃんは特待生として入学した進学校で、金持ちのバカップル同級生に「高いギャラ払うからカンニングさせて!」って頼まれて金儲けの味をしめ、ついには世界共通の大学入試試験というミッションインポッシブルなカンニングにその頭脳を駆使して挑む…というお話。
もう、予告編見ただけで面白そうでしょ!?自分はすぐにビビッと来ましたよ。これは面白い映画に違いないと。
んで、その期待通り、いや期待以上に面白い映画でした。「面白い!」なんて陳腐な表現ですが、ほんとにすっげー面白かったんですよ!
あ、そうそう。この映画はタイの映画なんです。
タイといえば、トニー・ジャーでお馴染み『マッハ!!!!!!!!』シリーズですよね。あれも理屈抜きに「すっげー面白い!」映画でしたが、まあでもちょっと稚拙なとこもありましたよね。映画の作りとして。
でも今作は、完璧とは言いませんが、細かいところまで練りに練って考えられた映画だと思いました。監督もジーニアス!
まずオープニングの校長先生との面談で、主人公の少女が裕福では無いことや、お金にしっかりしていること、気の弱そうなお父さんが付き添っていることで父子家庭であること等の状況が一発でわかるようになってます。
有名進学校ならではのお金持ちのバカ同級生がいたり、友達を助けたいというやさしい面を見せたり、その金持ち学生の親からの寄付(ワイロと表現)を求めている学校に対する幻滅など、少女がカンニングに手を染める動機もしっかり積み重ねて説明されています。
この映画、前半はかなりコメディタッチで描かれていますが、後半のカンニングシーンは手に汗握るサスペンス!映画サイトではタイ版『オーシャンズ11』、『ミッション・インポッシブル』なんて表現されているくらい。いわゆるケイパーもののスリリングさが非常に良く出来ています。
ほんとカンニングシーンは緊張感がハンパないです(ただちょっと長い(くどい)なぁと感じるとこもあったけど。あとアップのシーンが多過ぎ?)。
思うんですが、試験なんて誰でも経験していることのほうが、スパイや窃盗団なんて現実味の無い設定よりも感情移入しやすくてドキドキするのかも?
と、ここまではまあよくあるハリウッド映画で育ったアジアの監督が作ったよく出来た面白い映画、で片付けられちゃいそうなんですが。
実際、監督は『ミッション・インポッシブル』が好きで、カンニングに置き換えて作ってみたってインタビュー記事にも書いてました。
例えば多くのインド映画だって、ハリウッド映画をベースにしていますよね。
ただ、自分たちの文化に合わせて再構築して作り直しているから、唯一無二の面白い魅力が生まれているわけじゃないですか(違ったらごめんなさい)。
韓国映画にしろ香港映画にしろ独自の文化や価値観が根底に反映されているのが魅力だと思うんですよね。
ではタイ映画であるこの映画の魅力は?
自分は「道徳的でやさしい」ではないかと感じました。
だって「微笑みの国」なんて言われている国だし、人の良い親切な国民性らしいじゃないですか。行ったこと無いけど。
(こっからネタバレ…)
カンニングを犯罪に見立てたコメディチックなサスペンスだと、学校や制度(体制)側の鼻を明かしてスカッと終わり、なんて軽い話で終わりそうなもんですが、この映画はそうはなってなく、後半はむしろ重苦しい話になります。
クライマックスのカンニングシーンも前半のような軽快さはいつの間にか無くなって、非常に胃が痛くなるような苦しみとして表現されてます。
そして、結果的に友人をダークサイドに落としてしまった主人公は、犯した罪の大きさに直面し、自分自身に自問自答し、苦しみ悩みます。
そこで救ってくれたのは、冒頭にでてくる冴えないお父さんのやさしさなのです。最後の最後に正しさに向き合ったとき、本当のヒーローはお父さんだと気がついた、という映画になってたんです。ベタですがちょっと意外でしたし、魅力にも感じました。
あのお父さんの仏のような顔といったらもう。あの表情に勝手に自分はタイの人のやさしさを見てしまいました。
ああ、ああいう心底やさしい人間になりたいなあと(持ってないものに憧れるタイプw)。
大体この映画の中に、邪悪で意地の悪い主要人物はほぼ出てきません。校長先生だってすごくまともな人だし。一番おっかないのは試験会場にいる欧米人の試験官のオッサンだったかもw
そうそう、『マッハ!!!!!!!!』だって道徳的な話じゃないですか。トニー・ジャーも強いけどすごく朴訥としたやさしい青年なのが魅力だし。悪いのはたいてい欧米人になってるし(無理やりw)。
あたかもコメディタッチのクライムサスペンス風に宣伝してますが、これは青春映画であり家族愛を描いた映画なんじゃないかと感じました。
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マッハ!は最初観たとき衝撃だったなー。
未見ですがカンヌでパルム・ドールを受賞したタイ映画もあります。今度見てみよう。