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予告編見て面白そうだと期待していた映画!良かったです〜。
売りは「100%すべてPC画面の映像で展開する映画」!
厳密には「それPC画面じゃないだろ〜」とか、ちょっと無理やり感もなくはなかったのですが、それはまあアラ探しの範疇。普通に観てたら「最初から最後までPC画面で完結する映画」と思って間違いないです。
PCオタク版『96時間』
ある日、突然消息がわからなくなった娘を、PCやネットサービスを駆使し、執念で探しまくるパパが主人公。
このパパ(ジョン・チョー)はPCやネットリテラシーがなかなか高い。
Windows XPの頃からすでに家族の思い出はPCで管理しており、子供にも小さい頃から専用のアカウントを用意するという英才教育っぷり。
娘のおともだちの情報もWindowsのアドレス帳で管理させてるし、スパムなポップアップで埋め尽くされるネットゲームにも果敢にチャレンジさせるw
妻や子供の思い出動画をクラウドにアップするのは今では当たり前ですが、YouTubeサービス開始当初あたりと思われる頃から早々とネットにアップロードまでするほどの新しもの好き。
今はもうイケてないWindows(ごめんw)はすでにお払い箱。すっかりApple製品に鞍替えし、娘との連絡もMacbookのメッセージアプリでスタイリッシュにこなす。タイピングもおそろしく速い。
そんなパパなので、娘のMacbookのログインパスワードも易易と解除してしまいますが、たまたまパスワード書いたメモがあったとか、実は凄腕のハッカーだった、なんていうご都合主義ではなく、ちゃんと実際の手順を使って「これならありえるな」と思わせる設定になってるとこが素晴らしい。
リーアム・ニーソンのように「実は超人パパだった」ではなく、あくまでごく普通のPC好きなパパが、執念だけで事件の謎を解き明かしていくところが案外嘘くさく見えなくてリアリティを感じました。
全編PC画面ですが…
観る前は確かに「全編PC画面なんて、話題性だけで厳しいんじゃないかなー」と思ったんですが、いやいや、とてもよく考えられていて、ほぼ飽きることは無かったです。
PC画面を使うという手法は『アンフレンデッド』というホラー映画がすでにやっていたのである程度の想像はつきましたが、それでもGoogle、Facebook、YouTube、Instagram、Tumblrなどの実際のメジャーなサービスをふんだんに使っているので、知っていれば知っているほど面白いし、それらを最大限に活かしたアイディアや小技がとても効果的でした。
PC自体の特性も、状況説明や主人公の心情を表現するのにうまく使ってて、下手な役者に演技させるよりもずっと主人公の不安や戸惑いが伝わる演出になっているのも良かった。
例えば(昔からよく使われる手法ですが)いったん書いたテキストを送信しようか迷ってから、結局デリートキーで削除して書き直すことで主人公の迷いや心情の変化を表現したり。
あるいはマウスの動きやウィンドウの切り替えで主人公が注目している部分を強調・説明したり。
スクリーンセーバーを表示することで睡眠中であることを表現したり、デスクトップのファイルがいつのまにか乱雑に溢れかえっていることでの時間経過や主人公の焦り・苦悩を表現していたり。
枚挙にいとまがないほどに小技が効果的に使われてて、見てて全然飽きないのです。
おそらく監督や制作スタッフはPCやネット 大好きで、愛情すら感じました。
まあ、普段PCに触れているからこそ伝わる演出とも言えるので、PCやネットに疎すぎる人にはもしかしたらピンとこないかもしれませんが…。
ミステリー/サスペンスとしてもよく出来ている
PC画面だけ、という変化球だけで勝負しているわけじゃなく、純粋にミステリーやサスペンスとしても良く出来ていると思います。
細かい伏線もたくさん入ってるし、回収もの仕方もうまい。ミスリードする演出で、自分のような素直に展開を追っていくような人だと、まんまと驚かされたり騙されたりするんですが、勘の良い人だと先は読めちゃうかもしれません。
この辺はネタバレになっちゃうので詳しくは書きませんが、これ、脚本(ストーリー)だけを持ってきて普通の手法で撮ってしまうと、どうなんでしょうかね。
腕のある監督や撮影監督であれば、それなりに面白い映画に仕立てられるかもしれませんが、もしかしたら、「まあ、よくある展開だよね」で終わっちゃいそうな気がしないでもないです。
やはりPCやネットの特性を上手く使った見せ方が効果的に機能したサスペンスなんだと思います。
あと、ネット社会に警鐘を鳴らすとか、SNS批判とか(エマ・ワトソンとトム・ハンクス主演の『ザ・サークル』のような)ウザいテーマは入ってないのも好感持てました。
ちょっとした風刺や皮肉はありますが、どちらかというとギャグとして笑えるものでした。
家族の物語
でましたねw 家族の物語。
この映画の重要なテーマです。
もうね、冒頭部分で早々と泣かされてしまいます。説明セリフはほとんどなく、PC内のアクションだけでこの家族の歴史が語られて、そこも良く出来ているのですが、ちゃんとジーンときますよ。
あー、もうこれ以上は何も言えないなぁ…。
主役がアジア人というのも効いてますよね。
これが、有名白人俳優だったらだいぶ別モノになっていたかも。
FaceTimeでの顔アップが多いので、このジョン・チョーさんの困り顔が妙にハマってるというか。親近感湧きまくりで好感持てました。
いずれは陳腐に…
コンピュータやネットのテクノロジーは日進月歩、いや秒進分歩ってくらい凄まじく変化し続けているので、10年後くらいに観たらかなり古臭い映画になっている可能性がありますよね。
でも、だからこそ時代の文脈を読み取る記録としても、こういう映画は意味があるんじゃないかと思ったり。今リアルタイムで観ておくことで、あとあと思い出すと面白いかも?
ただ、これDVDが出て、自宅のMacで再生したら、相当変な画面になるかもしれませんね(笑)
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余談。
監督のアニーシュ・チャガンティさんは、インド系アメリカ人で、Googleグラス(メガネにカメラを仕込んだGoogleの壮大な失敗プロダクトw)で撮影した動画がGoogleの目に止まり、GoogleのCM制作担当に抜擢されたそうです。
その作品がこちら。
'Seeds' - a short film via Google Glass by Ginger Times
ほんの2分ほどのビデオですが、とても素晴らしい。
これを見ると、『search/サーチ』の原点という気すらします。
実は私ちょっとだけPCオタク。
仕事でもMac、Windowsはフロッピーディスクモデルの頃から使ってたし、Windowを経て今はMacbookとiPhoneを愛用しているので、ほぼこの主人公と同じ経歴とも言える。
冒頭に出てくるWindows XPは、当時のブラウザや当時のGoogleロゴを再現してて、そこはもうオッサンの特権としてニヤけながら見てましたw
それもあって、たぶん2〜3割増しで楽しめたと思います。
とはいっても、主人公のパパと一緒で今どきの新しいサービスにはもうあまりついていけないんですけどね(YouCastとか知らんかったし)。
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これも結構面白かったです。が、最後がグダグダだった記憶が。
SNS社会の恐怖を描きたかったようだが、終始、失笑する映画だったw アンオススメ。