今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

グリーンブック

今年はアカデミー賞当日にたまたま有給休暇を取っていたので、朝っぱらから中継見て楽しんでました。

これまであんまり賞レースとか興味なかったのですが、お祭りとして見る分には悪くないなと思い、2年くらい前からツイッターとかでワーワー楽しむようにしてます。

で、作品賞を見事ゲットしたのは『グリーンブック』。

https://eiga.k-img.com/images/movie/89815/photo/a30b1bea116ebea7/640.jpg?1543969009

グリーンブック : 作品情報 - 映画.com

あの『メリーに首ったけ』のファレリー監督が作品賞受賞ってちょっとびっくりしましたが、ヴィゴ・モーテンセンマハーシャラ・アリの珍道中映画?という情報が流れてきた時からめっちゃ楽しみにしていたので、公開初日に仕事終わってソッコーで観に行きました。

金曜は映画が安いので混みがちなのですが、テレビでも散々報道されていたアカデミー作品賞という威力は凄まじくほぼ満席!こんな混みようはスターウォーズ最新作公開初日以来ですよ(ネットで席を予約しといてよかった〜)。

 

結論から書いちゃうと、メチャクチャ良い映画でした。

最近、観た映画がピンとこないことが多くて、観終わった後にネットのレビューや町山さんの解説聞いたりしてなんとか理解が追いつくという、そんな私がスッキリ素直に「面白かった〜」と思えたので、たぶん「映画詳しくないけどなんか面白いの無い?」という感じの人に自信を持ってオススメできます…たぶん(自信はどこいったw)。

 

舞台は1962年のアメリカニューヨーク。
ナイトクラブの用心棒をやってる粗野で大食いで典型的な下町育ちのイタリア系移民ヴィゴ・モーテンセン。職が無くなったので、しょうがなく金持ちでインテリで著名なピアニストの黒人マハーシャラ・アリの付き人として、アメリカ南部を演奏会ツアーで周る珍道中に出る。そこで二人に友情が芽生えるというお話。

ネットでもちらほら書かれてるように2011年のフランス映画『最強のふたり』によく似ている。大富豪の身体障害者貧困層の黒人男性という普通なら交わることのない階層の人たちの友情物語、という構造がグリーンブックとほぼ一緒。

 

タイトルのグリーンブックというのは、黒人向けの旅行ガイドブックのこと。つまり、白人向けのホテルとかレストランに間違って入ってひどい目に合わないように作られたもの。
まだ黒人差別が根強く残っている時代なので(特に南部)、黒人隔離法がまだまだまかり通っていて、トイレもバスもレストランも白人と区別されている。うっかり白人のテリトリーに入ろうものなら殺されてもおかしくない、そんな時代。

 

差別をテーマにしていると聞くとなんだか重そうだけど、そんなことはなく、全編ユーモアに溢れた コメディ映画なのであまり疲れたりはしない。

最近、なんとなくどよーんとした少し重たい映画が多いのもあって、個人的にはその明るさというか、ほんわかした気持ちになれるとこがとても良かった。

最近はマーベルのヒーロー映画ですら重たいテーマが見え隠れして、スッキリさせてくれないところあるじゃないですか。そんな風潮にちょっとカウンター当てたようで逆に新鮮に感じたというか。

差別を扱いながらも、重さをほとんど感じさせないって逆にすごくない?オーソドックスな映画も悪くないよなーと久々に感じました。

つっても、やっぱりアメリカじゃ、一部批判的に取られたりしてるっていうんだから世の中は複雑ですね。

あ、そうそう。この映画は実話ベースなんですよね。
イタリア系移民の強面、ヴィゴ演じるトニーさんは、まあとても解りやすいキャラなんだけど、対するマハーシャラ・アリ演じるドン・シャーリーさんは「何なのこの人?」って誰もが思わずにいられない人物。だって、黒人は貧困で差別されて大変な目にあってる時代なのに、金持ちでインテリでピアニストって。

あまり知られてない人らしいのですが、かなりの上流階級にいる人だったみたい。
クラシック音楽出身のピアニストなので、当時、庶民に親しまれた黒人音楽に疎くアレサ・フランクリンも知らないというw。逆にイタリア系のトニーのほうが黒人事情に詳しいというギャップがコメディになってるんですよね。実話なのに、まるで作り話のような面白い設定(貧乏白人が金持ちの黒人に雇われる)。

差別の話を逆に利用してそのギャップをうまくヒューマニズムにして描かれているのが面白いんですよね。差別よりもギャップメイン。
もちろん不穏なシーンやちょっと重いシーンもあるんです(入れないとそれはそれで偽善っぽいし)。ただそれを無理に引っ張らずに直後にギャップコメディで笑いに持っていくので、サラッと軽い気持ちになるんですよね(そこが気に入らないって人ももちろんいるのかもだけど)。二人の立場や主導権がバランスよくころころ変わるのが面白い。

そうそう、この映画はフライドチキンが食べたくなる映画ってツイッターで見かけたんだけど、本当にそうでした。ただ、これもツイッターで知ったんだけど、フライドチキンというのは黒人文化に密接に関わっているものらしい。え?何それ?と思うのは無理ないですよね。日本人なら。

 ここで紹介されているNetflixの『アグリー・デリシャス』6話を観てみました。チキンとスイカを出すことが黒人を侮蔑する行為なんてまったく知らなかった。勉強は大事ですね。

この事からも、ファレリー監督は黒人差別にちゃんと向き合っていると伺えるのだけど、まあどこまで行っても白人監督の撮った映画と言われちゃうんだろうね。

 

アカデミー賞の話に戻すと、マハーシャラ・アリ助演男優賞をゲットしました。
でもこの映画はヴィゴ・モーテンセンマハーシャラ・アリどちらも主演であり助演でもあるので、正直両者にあげないとおかしいでしょ、ってくらいどちらも良い演技してました。この映画が心温まる映画になっているのは、ヴィゴ・モーテンセンのおかげと言っても過言ではないくらい。
最近お友達?になったミセスGさんのブログのレビューにも同じこと書かれてました。同意!

www.realoclife.com


ちなみに、「ヴィゴ・モーテンセン」で画像検索すると、やはりブログでお友達になったseicolinさんの「ミーハーdeCINEMA」のイラストが上位に表示されます。マジ凄い!

seicolin.hatenablog.com

もひとつちなみに、私が使ってるゾンビのヘリボーイアイコンはseicolinさんから頂いたものですw

 

ヒストリー・オブ・バイオレンス』とか『イースタン・プロミス』で、とんでもなくバイオレンスな役を演じたあのヴィゴが、お腹でっぷりのオッサン役で愛らしいってのがなんとも複雑な気持ちになります。
ここからどんどんお笑い路線に行ったらどうしようw

 

下手にアカデミー作品賞を取ったばかりに一部批判されたり、過剰な期待で見られるという不幸な面もありますが、60年代の町並み、きれいなピーコックグリーンのアメ車、60'sファッション、などなど映像もほんと素晴らしい、良い映画だと思います。


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ヴィゴといえばたくさん良い映画あるけど、個人的なオススメはこちら。

イースタン・プロミス [DVD]

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マハーシャラ・アリも良い映画ばっかり出てますよね。ハウス・オブ・カード(ドラマ)のダントン役も印象的でした。

ドリーム (字幕版)

ドリーム (字幕版)

 
ムーンライト(字幕版)
 


Netflix加入しているのであればぜひ「アグリー・デリシャス」6話も合わせて見てください。ガイドブックとしてのグリーンブックも出てきます。

www.netflix.com