今日の経験値

主に映画の話。70〜80年代の映画やカルチャーを懐かしむことが多いかも。

ミナリ

アカデミー賞作品賞にノミネートされているということもあり、ちょうど公開が始まった『ノマドランド』とどっちにするか迷いましたが、なんとなくこっちを選択。

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Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

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なかなか渋くてしんみりとした良い映画。観終わったあとに、あれこれ考えたり自分の人生を少し振り返ってみたりするような大人向けの映画でした。

ウォーキング・デッドのグレンでおなじみのスティーブン・ユアン主演。レーガン大統領の頃のアメリカ、ということは時代設定は1980年代。

80年代というと割と浮かれた時代だったような気がしますが、この映画はまるで西部開拓時代かってくらい華やかさとは無縁のド田舎アーカンソーが舞台。
それまで住んでたカリフォルニアから新天地での成功を求めてやってきた韓国系移民一家のお話。
監督もメインキャストも韓国系ですが、韓国映画ではなくアメリカ映画です。

 

まだ30代と思わしき夫婦と、小学校低学年くらいの娘と息子の4名家族。

息子は肺に問題を抱えていて運動もままならないが、ユアン父さんが「いっちょ新天地でひと旗上げたるでー!」となけなしの貯金をはたいて農場を始めるための土地を借り、トラクターを買い、ボロいトレーラーハウスで新生活が始まる。

しかし妻は「え?何?ずいぶん話が違うし、子供が持病持ちなのにこんなド田舎やばいだろ!」と文句たらたら。
さらに初日からハリケーン来るわ、農業を手伝ってくれるポールさんは何やらおかしな男だわ不安がいっぱい。
しかも土地を耕し作物を育てて売りさばけるようになるまでは、日々の稼ぎが必要なので、近隣のひよこの雌雄選別の工場で働かなきゃいけない。

映像は、被写界深度がとても浅く幻影的で、アメリカの田舎の風景も素朴で美しい。だが、始まりから不安な要素をどんどん挟み込んでいくので、なにか悪いことが起こりそうな緊張感がずっと張り付いている。
選別されたひよこのオスは卵も産まないし、成長しても美味しくないので、工場で焼却処分されるという説明とともに煙突から煙がもくもくと上がる映像は、この先を象徴するかのように不気味。

「うわー、こんな胃がキリキリするような映画はきついなあ」と思ったところで、奥さんの母親が韓国からやってくるところから雰囲気ががらっと明るくなる。

このおばあちゃんがめっちゃ明るくてキュート!子供たちに花札を教えたり、教会への寄付のお金を渋ったり。おせっかいで、ちょっぴり粗野で、でも生きるために大切な知恵や心持ちを教えてくれる。

最近はこういうおばあちゃんっていなくなっちゃったかもしれないけど、自分が子供の頃に周りにはこんなおばあちゃんだらけだった。

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Photo by Melissa Lukenbaugh, Courtesy of A24

ミナリ : フォトギャラリー 画像(14) - 映画.com

こっから少しネタバレ的なのですが、この映画、予告編を観た段階では、アメリカの田舎に移民としてやってきた韓国の家族とおばあちゃんとのヒューマンドラマなんだろうなと思ってたけど、そんなよくあるお話ではなく、宗教(キリスト教)的なテーマらしきものが含まれていて、その辺がちょっと良くわからなかった。

聖書とか読んだことないし、キリスト教についても映画で見聞きしたくらいしかしらないのだけど、それでも主人公の名前がジェイコブで、息子がデイビッド(ダビデ?)というのは自分レベルでも気づくし、敬虔なクリスチャンで十字架を背負って歩くポールさんや、教会に熱心な奥さんなど、至るところで明らかにキリスト的なお話と思われるエピソードやセリフが散りばめられている。
おばあちゃんと孫が、川辺で出会うヘビのくだりのセリフがいかにも宗教チックで象徴的でした。

韓国映画などで顕著な、儒教的な家族のあり方を象徴するおばあちゃんと、新しい土地で苦難の連続を経験するキリスト教的なお話がどっちつかずにも感じてしまった。

なので、モヤッとした印象はあるけど、アメリカ移民の家族の物語としてとても面白く観ることができました。

 

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ファイティン!(字幕版)

ファイティン!(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

おばあちゃんも良かったけど、奥さん役のハン・イェリさんがとても綺麗に映し出されていました。ハン・イェリさんはマ・ドンソクの『ファイティン!』にも出演してましたね。

バーニング 劇場版(字幕版)

バーニング 劇場版(字幕版)

  • 発売日: 2019/08/07
  • メディア: Prime Video
 

いけ好かない金持ちも演じているスティーブン・ユアン