観た映画:ワンダーストラック
http://www.imdb.com/title/tt5208216/
「キャロル」で何とも言えない美しい映像と切ない恋愛を描いたトッド・ヘインズ監督の新作。
トッド・ヘインズ監督が特段好きというわけでも無く(映画もキャロルしか観てないし)、予告編も見ず、ストーリーすらも読まず、何となく面白そうだなあという直感で観たのですが、これがまた大当たり。すごく良い映画でした。
今年観た映画では上位には食い込みそうな気がします(時間が経つとそうでもなくなることもありますけどw)。
と、自分にはとてもフィットしたんですが、実は好みの分かれる映画なのかもしれません。映画サイトでの評価では厳し目の意見やピンとこないってレビューも結構目立ちました。
この映画は途中でどういう展開になるかはなんとなく見えるし、ミステリアスなお話ではあるけど驚くようなオチが肝になっているという映画ではないのですが、これから観ようと思っている方は、以下ご注意を(この説明自体ネタバレ?w)。
あらすじはこんな感じ。
1977年、ミネソタ。母親を交通事故で亡くした少年ベンは、母の遺品の中から、会ったことのない実父に関する手がかりを見つける。その50年前、1927年のニュージャージー。厳格な父に育てられる聴覚障害の孤独な少女ローズは、憧れの女優リリアン・メイヒューの記事を集めたスクラップブックを大切にしていた。ある日、ベンは父を捜しに、ローズは憧れの女優に会いに、それぞれニューヨークへ向かう。2人の物語は、やがて不思議な縁で結びつき……。
このふたりのストーリーが交互に描かれ進んで行きます。
ローズは聴覚障害の女の子(なんとローズ役のミリセント・シモンズさんは本当に聴覚障害者なんだとか!)、ベンは両親を亡くした男の子で、さらに不幸にも雷にうたれて耳が聞こえなくなってしまいます。
まずビックリするというか面白いのが、この映画、まるでサイレント映画のように途中からセリフがほとんど無くなります。
当然それはふたりが「聞こえない」演出というか表現なのですが、特に1927年のローズのパートは、ハッキリと意図的にそうしてて、映像と音楽と効果音ですべてを説明してくれるんです。これがもう楽しいというか、驚きというか、うっとりと言うか、まさに映画的な面白さに満ちてるんです。
対する1977年のパート。
これは自分の大好きな70年代を完全再現!ってだけでもう最高!満点ですw
これまでも70年代を再現した映画はいっぱいありますが、この映画がもしかしたら一番こだわっているかもしれないです。それくらいこだわりをビンビンに感じました。
だって、広い空間でクルマや人もわんさか登場するのに、隅から隅まで70年代なんです。そこに出てくるエキストラの人も、みんな70年代に生きてる人に見えるし、特に黒人のファッションとか細かいとこまで凄くこだわってます。
つい最近、大好きなブルースブラザーズを家で久々に観たんだけど、あの雰囲気がちゃんと出てて、連続して観ても全然違和感ないかも(言い過ぎかなw)。
以前、こんな駄文も書いてますのでおひまなら読んでみて下さい。
そういえば「キャロル」も50年代だか60年代だかわかんないけど、当時の映像再現にこだわりまくってたし、まだ観てませんが「エデンより彼方に」もそういう映画らしい。
トッド・ヘインズ監督は古い映画を徹底的に再現するのが特徴なんですね。
あと、音楽も良かった!
デヴィッド・ボウイの曲をメインに、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」でも使われていたFOX ON THE RUNとか、あとファンクでソウルな曲もいっぱい。2001年宇宙の旅もあったり、まあ楽しいしニンマリしてしまいます。
ボブ・ディランやデヴィッド・ボウイの映画も過去に作ってるし、監督は音楽にも相当なこだわりがありそうです。
まあでも、この映画に一番グッときたのは、やっぱりこのふたつの物語が呼応するようにだんだん絡んでいくところ 。
孤独でどん底な主人公たちは、自分の信念に対してストレートに追い求めた結果、失ったものが復活します。不幸やハンデは決して人生において無駄なものでは無いし、あなたの人生もこの映画の主人公たちと同じように、すべてが繋がってて素晴らしいものなんですよ、っていう風に感じられたところですかね。
なんとなく、自分の好きな「ヒアアフター」や「メッセージ」を観終わった時のような感覚が味わえて、ずっと心に残りそうな映画になったかもしれません。
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トッド・ヘインズ監督の映画
2018年3月に劇場で観たその他の映画
会社勤めだと3月は期末で色々忙しいですよね。
それでも映画を観る時間は無理して作るけど、ブログに感想書く時間(気力ともいう)はなかなか取れないんですよね。
といういいわけを冒頭に、3月に観た映画の感想をまとめてみました(疲れた)。
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The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめ
元は小説。1971年にクリント・イーストウッド主演、ドン・シーゲル監督で映画化。今作はソフィア・コッポラ監督によるリメイク、とのこと。
ソフィア・コッポラ監督の出世作、「ロスト・イン・トランスレーション」は正直さっぱり良くわからなかったので恐る恐る観たけど、アレに比べると全然わかりやすい映画だった。のですが、面白さはあんまり感じなかったなあ…。わざわざリメイクするほどか?ソフィア・コッポラ監督は相性悪いのかも。
レディ・ガイ
これは予告編詐欺でしたねw
監督は70〜80年代の男臭い映画の巨匠、ウォルター・ヒル!
主演は世界一銃を構えた姿がキマってるミッシェル・ロドリゲス!
とくれば期待しないほうがオカシイ(いや、お前がオカシイとか言わないで)。
マチェーテみたいなバカっぽいアクション映画かなーと思ってたんだけど、さにあらず。結構渋い映画。
皆さん期待はずれだったのかレビューも軒並み低評価な感じですが、でも妙な味があってこれはこれで味わい深い映画でした。
でもねえ…やっぱりねぇ…いくらヒゲつけてもねぇ…ミッシェル・ロドリゲスは男に見えないんすよね…。
ダウンサイズ
これもある意味予告編詐欺?どう見ても小さい人間と大きな人間のギャップコメディにしか思えないけど、さにあらず。
周りを見ると楽しいコメディを期待したであろうカップルが多かったんですよねぇ…。
アレクサンダー・ペイン監督の前作「ネブラスカ」を観てた人なら回避できたかもしれないw
もちろん全編コメディチックには作られているんですが、シニカルな笑いなんですよね。
後半はガラリと別の映画になってしまいますが、テーマが結構深い良作だと思います。ただ、いかんせん尺が長い…。後ろの席のお兄さんは後半モゾモゾと落ち着きがなくなり、ため息なんぞついてましたw
でも劇中で「死を意識して生きてみることね」というセリフにはガツンとやられました。
ロング, ロングバケーション
www.youtube.comこの映画、ハートフルムービーな雰囲気を漂わせてますが、さにあらず。結構エグい内容です。映画の出来とかどうとか言う前に色々辛かったです。
半世紀も生きてると、この手の内容は身につまされる事が多くて楽しめないですw
とは言えヘレン・ミレン、ドナルド・サザーランドはさすがな演技ですよ。老いることの残酷さを見事に演じてます。
アメリカの美しい景色とキャンピングカーでの旅に見とれ、憧れる映画でした。
でも監督と製作国はイタリアってどういうこと?w
嘘八百
ごめんなさい…。武正晴監督の『百円の恋』は最高に泣けた好きな映画なのですが、今作はまったく自分的にダメでした。
人生に挫折した人たちの復活、というテーマは百円の恋と同じなんですけどもね。これはコメディ色が中途半端に強くて自分の肌にまったく合いませんでした。
とにかく娘と息子のエピソードはほぼ要らない気がしました…。
トゥームレイダー ファースト・ミッション
予告ではなんかショボそうだなあと思ってたんだけど、思ってよりずっと良かった。
映画だとアンジェリーナ・ジョリー版がありましたが、リメイクではなくリブート。
あのララ・クロフトが出来上がるまで、というさらに時代を遡った設定なので、まだ弱っちいララ・クロフトというのも新鮮でした。
突っ込みたいところはいっぱいありますが、変に小賢しいテーマとか入れずにストレートにアクションを楽しませてくれたところが好感。
主役のアリシア・ヴィキャンデルさんは、アンジーのような強い個性は感じませんでしたが、ゴツカワイイとでも言いますかw存在感ありました。
ニック・フロストににんまり。
ちはやふる 結び
シリーズずっと評判良いので気になって観に行ったのですが、確かに良かった!
上の句も下の句も観てないけど、数年前に夢中になってた妻と娘に便乗してアニメ版を最後まで見てたので、内容は全然オッケーだった。
ただ、やっぱり若い人に混じってキャッキャと楽しめるトシではないのでw 少し冷めた目で観てたけど、思ったよりウェットさも内輪っぽい雰囲気も最小限な感じで、とても良くできた映画だなと思いました。
上の句と下の句もレンタルして観ようかな。
トレインミッション
これは予告編詐欺じゃなかった!w
リーアム・ニーソンとヴェラ・ファーミガのツーショットだけでもう期待値MAXですよ。で、期待通りの面白さですよ。お約束だろうが、穴のある設定だろうが、期待通りの楽しさをキッチリ提供してくれるのはホント素晴らしい。
特に意識してたわけじゃないけど、ジャウム・コレット=セラ監督の映画は傑作「エスター」以降、気がついたら全部観てた。
監督は、リーアム・ニーソンの困った顔を撮らせたら今のところ世界一かもw
ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書
もうこれは文句無しの傑作でしょう。
スピルバーグ監督の「ブリッジ・オブ・スパイ」を観た時の感じに近い感覚でした。何というか、名人芸を見せられて呆気にとられてしまう感覚というか。
日本でも今大変な政治不信の真っ只中、全マスコミは従業員にこの映画を見せるべき。最後のほうのセリフにはホント痺れさせられる。
鑑賞前はメリル・ストリープとトム・ハンクスってだけで、ちょっとうんざりなイメージもあったんだけど、映画の力なのか、ふたりともすごく良かった。
あと、余談ですがブレイキング・バッド好きには、ボブ・オデンカークやジェシー・プレモンスが出ててにんまり(そう言えばトレインミッションには、スタローン似のジョナサン・バンクス爺さんがチョイ役で出てましたね)。
ヴァレリアン 千の惑星の救世主
ごめんなさい。正直まったくのれませんでした…。
「フィフス・エレメント」はかなり好きな映画だし淡い期待もあったんだけど、いかんせん当たりハズレの多い監督なので、それでもハードル低めに観たのですが…。
監督の中二病的な頭の中全開な映画なので、その世界観に同調できれば傑作なのかもですが、自分は完全に置いてかれました。
映画好きな方々が絶賛しているので自分は相当ズレてるのか、映画功夫が相当足りないのか、日々不安が大きくなりつつありますw
観た映画:リメンバー・ミー
http://www.disney.co.jp/movie/remember-me/gallery.html
ピクサー最新作。
ディズニー映画なのに「ピクサー最新作」って売り文句が使われるくらい、安定の面白さを保証するブランドになってますよね、ピクサー。
監督はそのピクサーを代表するリー・アンクリッチ。トイ・ストーリー3は泣きましたよね。最高でした。
当然このリメンバー・ミーも期待値MAX、面白くて当たり前のハードル上がりまくりになるのはしょうがないですよね…。
以下、軽いネタバレあると思うので観てない人はご注意ください〜。
あらすじはこんな感じ。
主人公は、メキシコ・サンタ・セシリアに住む12歳の少年ミゲル・リヴェラ。彼が生まれ育ったリヴェラ家には、ミゲルの高祖父にあたる人物が音楽家としての夢を追いかけ、家族を捨てた過去があることから、「音楽禁止」という厳重な掟があった。家族から音楽を禁じられているにも関わらず、ミゲルは音楽への思いを募らせ、将来はミュージシャンになることを目指していた。
1年に1度だけ他界した先祖が家族に会いに来るという死者の日、音楽コンテストに出席するために霊堂に飾られた遺品のギターを盗んだことで、死者の国に迷い込んでしまう。
そこで出会ったヘクターと、生者の国に戻るための冒険がはじまる。
リメンバー・ミー (2017年の映画) - Wikipedia
「死者の日」って言葉のインパクト凄いですよね。英語で言うと「Day of the dead」。まるでゾンビ映画みたいだけど、これはメキシコの祝祭日の事で、米国で言うハロウィンみたいなものらしい。
すぐに思いつくのは007『スペクター』。冒頭でお祭りの中でのアクションシーンがありましたよね。ガイコツのお面や仮想をしてのパレードがあったりして、楽しげでもあり不気味でもあり。
亡くなった人々をお迎えする日というと、日本人的には「お盆」。そう、ホントにこれはまったくお盆がテーマの映画でした。
というのも自分が住んでる沖縄では旧盆(旧暦のお盆)をやるのですが、メキシコの風習が沖縄のお盆とイメージが近いなあと感じまして。
旧盆の3日間は1年の中で特に大事な日というか、一大イベントになってて、たぶん沖縄以外の日本のお盆とはちょっと様相が違っているんじゃないかと思います。
祖先崇拝や家族の結びつきが強く、先祖代々の位牌を持つ長男の家に、親族が続々集まって盛大にお供えして先祖をお迎え、朝晩のご飯も用意し、もてなして、3日目の深夜にまたあの世にお送りします。
年老いた先祖のために杖代わりのさとうきびを立てかけたり、あの世でお金に困らないようにウチカビという紙を炊いて持たせたり、と言った具合に、とにかく先祖ファーストという思想ですw
(とはいえ最近では徐々にそういう風習も簡略化されて、自分を含め若い世代にはどんどんあっさりした行事になりつつありますが)
とにかくメジャーな行事なので、旧盆をテーマにしたお芝居とかコントとかもたくさんあって、沖縄の人からみたらこの映画はかなり親近感を持って観られるんじゃないかなあ。
家族における上下関係も結構似てて、映画の中でもおばあちゃんが一番強く、まるで家長のような存在でしたが、あれも割りとそのまんまだしw
あと、映画の中で描かれる「二度目の死」についても、お盆では何度も同じような昔の祖先の話を自然と話題にしたり、思い出話をすることが供養になるという教えも聞いたことがあるし、やはり違和感なく受け取れました。
と、変な前置きになってしまいましたが、この映画は「家族」についてのお話です。
「家族って大事なもの、素敵なもの」というテーマの映画(特にファミリー向けの映画は当然)多いですが、でも家族って近すぎる存在ゆえに、現実的にはいがみ合ったり、憎み合ったり、下手したら遺産相続争いなんかで縁を切ったり切られたり、まあ大変なことのほうが多いですよね(映画「犬猿」でも兄弟のそういう関係を描いてました)。
特に若い時はとにかく束縛されてウザいし、一人になって好きな事したい、って気持ちが強かったりしますよね。
主人公のミゲルくんは、家族想いのとってもいい子なんだけど、まさにそんな状況になってしまう。もちろんファミリー向けのアニメ映画なので、そんなにエグい描き方はしてませんが、でもやりたいこと(音楽)ができない辛さは痛いほどよくわかる。
家族を取るか、やりたいこと(音楽)を取るか、という難しい選択があって、彼の先祖にも音楽という夢を取ったために家族から「いなかった」事にされたおじいさんがいる。
ミゲルくんはそのおじいさんに共鳴して、自分のやりたいことを実現させ、また家族にもそれを理解してもらおうと奮闘する、というのが基本のストーリー。
冒頭のミゲルくんが歌手デビューを夢見て、家族に禁止されている音楽を密かに練習したり、好きな歌手のビデオを食い入るように見たり、コンテストに出ようとしたり、という展開はワクワクしてとっても良かった。
でも、そこから死者の国に迷い込んでからの展開は、「どうせ過去の先祖の誤解をなんとかうまく時間内(夜明けまで)に解決しちゃうって展開なんでしょう」と思ったら急になんか冷めたというか、正直のれなくて。
限られた時間のタイムサスペンスは、まるで「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたいで(体が消えかかるとか)楽しいんだけど、上手く行かないと「あーもう、イライラする」って感じでw
中盤はそんな感じでなんとなーくイヤな予感を感じつつ観てたんですが、やはりそこはピクサー、アンクリッチ!。後半にいくつかひっくり返して怒涛の展開になります。
そして、もうどうなるかわかってるんですが、それでもミゲルくんの奏でる曲と歌に、号泣寸前まで追い込まれますw
現実は家族に対して嫌なこともあるだろうけど、でも今一度ちゃんと振り返って大切にしないとな、という気にさせられちゃいます。やばいよピクサー。
まあ、最後は予定調和っちゃそうなんですが、あのトイ・ストーリー3の最後の生か死か、という凄みのあるシーンを演出した監督の手腕は、この映画でもしっかり発揮されていると思いました。
自分的には「トイ・ストーリー」シリーズは、いくらピクサーが今後がんばっても、もう絶対に越えられないマスターピースだと思っていて、さすがにそれと比べるわけにはいかないのですが、でも最近ちょっと興味を失いつつあったピクサーアニメに対して、お盆という親しみやすいテーマもあり、結構好きな作品になったかも。
死者の国がまるで夢の国のようなカラフルで美しい世界だったり、ガイコツの造形や動きも面白いし、メキシコの陽気な楽曲も楽しいし、何よりココおばあちゃんの顔がもう最高でした。
そういえば、自分は字幕版で観たんだけど、吹替版もどんな感じなんだろう。予告編を観る限り悪く無さそうですよね。
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あまりいないとは思うけど、まだ見てないという方はマストですwぜひ!!
サントラ聞いたら泣きそうw