観た映画:The NET 網に囚われた男
これまで観たキム・ギドク監督の作品は『嘆きのピエタ』『メビウス』の2本だけ(あと脚本、編集、プロデューサーで携わった『レッド・ファミリー』くらい)。
ただ、その2本が想像を超えた強烈な映画だったので、正直もうそれだけで充分ってくらいこの監督の凄さは、アホな自分にも伝わっているつもり。
その監督の新作ということで、楽しみ半分、不安半分で観てきました。
韓国映画はヘビーな映画が多すぎて、連続して何度も観るのは正直キツいんだけど、その中でも先に上げた2本はもうしばらくいいやってくらいキツかった。
ただ、今回のこの『The NET 網に囚われた男』はそういう意味ではそんなにキツい映画ではなかった。
というのも、先の2本はとにかくもうトラウマレベルで人間の業をこれでもかというくらい描いていて、見ててもういたたまれなくなる内容なんだけど、今作は国家の残酷さ、醜さ、怖さをメインに描いているので、正直ちょっと拍子抜けな感じさえした。
確かに、南も北も非常に身勝手に国の論理を押し付け、ただただ翻弄されてしまう主人公の苦悩は描かれているんだけど、ストーリーや展開にそんなに意外性はなく、お互いの国が合わせ鏡のようになっているという表現もなんだか安っぽく感じてしまった。
とはいえ、考えさせられる部分や感情に訴えかける部分あるし、見終わった後の切なさもハンパない。
ただ、自分の期待したキム・ギドク監督の心をえぐられるような感じはかなり薄かったという感想。
正直、南北モノとしては『レッド・ファミリー』のほうがわかりやすく、人間ドラマとしても面白かったけど、そもそもああいうエンタテイメントの強い話を作る気はなかったんだろうな。
他の俳優はあまり印象に残ってないんだけど、主人公を演じたリュ・スンボムさんは愚直な人としてとてもいい味出してました。
ちょうど今、北朝鮮とアメリカの牽制合戦がすごい時期だけに国際的問題としての視点になりがちで、「北朝鮮をぶっ潰せ!」なんて勇ましいこと言う人たちが増えているけど、戦争にでもなったらこういう普通の感覚で生活している普通の人達が真っ先に犠牲にされるんだろうね、という感覚も忘れないようしないとな。
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これ見たら一週間くらいゲッソリすること間違い無し。
夢に出てくるくらい強烈な映画。今のところこれ以上「痛い」映画は見たこと無い。
前半は笑いどころも多い。最後はそれなりにつらい展開。自由な国に生まれてよかった 。